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平成9(1997)年度~19(2007)年度生まれの女性が、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するワクチン接種を無料で受けられる「キャッチアップ接種」の期限が、来年3月末に迫っています。3回の接種を完了するためには、初回は9月中に受ける必要がありますが、広く知られていないのが現状です。理解と啓発のため広島大学の教授や広島大学病院の医師が9月5日に会見し、接種を呼びかけました。
子宮頸がんは、若い世代の女性のがんの中で多くを占めるがんで、国内では毎年、約1万人以上がかかり、さらに毎年、約2900人が亡くなっています。HPVワクチンは小学6年生から高校1年生相当の女性を対象に定期接種が実施されていますが、厚生労働省は平成25(2013)年6月に、接種後の疼痛や運動障害などを訴える声が相次いだのを受け、接種の積極的な勧奨を中止。しかし症状とワクチン接種との明らかな因果関係は証明されず、令和4(2022)年4月、積極的勧奨を再開しましたが、この間に接種率は大きく落ち込んだため、平成9年度~19年度生まれの女性を対象に、キャッチアップ接種を実施しています。自費だと5~10万円ほどかかる費用を公費で全額負担します。その措置の期限が来年3月です。
厚生労働省が公表した都道府県別接種率によると、広島県における令和4年度のHPVワクチンの接種率は、定期接種、キャッチアップ接種それぞれ、9.3%、7.5%にとどまっています。
広島大学保健管理センターが今年3~5月、本学学生の意識調査をしたところ、回答した165人の約半数が、HPVワクチンについて、「聞いたことはあるがよく知らない」もしくは「聞いたこともない」と回答。「キャッチアップ接種が今年度末に終了し、それ以降の接種は有料になること」について、72%が「知らない」と答えました。自由記述では、副反応を心配する声が多く、大学病院小児科の木戸口千晶医師は「情報が古いままで、正しい知識が広まっていない」と分析します。
こうした結果を踏まえ、広島大学病院は本学内や県内の大学、高校などに向けて、さらなる普及啓発活動を進めています。広島県内の中学校、高校でHPVワクチンについて説明したリーフレットを配布し、各大学の保健管理担当者会にワクチンの周知を依頼。本学内や大学病院にはポスターを掲示し、食堂にチラシを掲示しています。
大学病院循環器内科の小畠啓史医師は「ワクチンと疼痛、運動障害などとの因果関係は証明されていない。正しい情報から接種を判断してほしい」と強調。広島大学保健管理センターの岡本百合教授は「子宮頸がんは20代からかかる。予防を身近なこととして考えてほしい」と訴えます。
ぜひ正しい情報をもとにHPVワクチンの「打つ」「打たない」を、ご自身で判断してください。
広島大学保健管理センター