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【研究成果】B型肝炎ウイルス(HBV)感染者において重篤な肝炎を引き起こすD型肝炎ウイルス(HDV)の診断における抗体検査の有用性を、システマティックレビューとメタ解析によって明らかにしました

本研究成果のポイント

  • D 型肝炎ウイルス(HDV)の感染診断において、抗体検査が有効であることを明らかにしました。
  • 専門的な設備や技術が乏しい地域でも、HDV の感染を早期に把握できるようになることが期待されます。

概要

  • 広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学 Golda Ataa Akuffo 氏(博士課程後期)、KoKo助教、杉山文講師、田中純子特任教授らの研究グループは、HDV 抗体検査の診断精度を評価することを目的としたシステマティックレビューとメタ解析を実施しました。
  • その結果、HDV IgG 抗体の感度は97.4%、特異度は85.0%と高い精度を示し、HDV のスクリーニング検査に有効であることが示されました。
  • 本研究は広島大学肝炎・肝がん対策プロジェクト研究センターおよびJSPS 研究拠点形成事業B.アジア・アフリカ学術基盤研究(課題番号JPJSCCB20210010, JPJSCCB20240009)の支援を受けて実施されました。
  • 本研究成果は、「Scientific Reports」誌に掲載されました (2024年8月9日)。

発表論文

・ 掲載誌:Scientific Reports(Q1)
 ・論文タイトル:
Assessing the diagnostic accuracy of serological tests for hepatitis delta virus diagnosis: a systematic review and meta-analysis
・著者名:
Golda Ataa Akuffo1,2 Serge Ouoba1,2,3 Ko Ko1,2 Chanroth Chhoung1,2 Zayar Phyo1,2 Ulugbek Khudayberdievich Mirzaev1,2,4 Aya Sugiyama1,2 Tomoyuki Akita1,2 Junko Tanaka1,2*
1. 広島大学大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学
2. 広島大学肝炎・肝がん対策プロジェクト研究センター
3. Unité de Recherche Clinique de Nanoro (URCN), Institut de Recherche en Science de la Santé (IRSS), Nanoro, Burkina Faso
4. Department of Hepatology, Scientific Research Institute of Virology, Ministry of Health, Tashkent, Uzbekistan

・DOI : https://doi.org/10.1002/jmv.29826

背景

  • D 型肝炎ウイルス(HDV)は、B 型肝炎ウイルス(HBV)の感染者にのみ感染し、感染者の肝機能を著しく悪化させます。そのため、近年世界保健機関(WHO)は、すべての慢性HBV 感染者に対してHDV のスクリーニング検査を推奨しています。
  • HDV 感染診断において、ウイルス自体を検出するPCR 検査が最も正確ですが、費用や技術の制約で利用できない国や地域もあります。一方、HDV 抗体検査は(※1)は比較的簡便で広く利用可能です。
  • しかし、HDV 感染診断におけるHDV 抗体検査の精度については、これまで十分明らかになっていませんでした。

研究成果の内容

  • 本研究では、HDV 抗体検査の診断精度を評価することを目的として、システマティックレビューおよびメタ解析(※2)を実施しました。
  • 複数の学術データベースから抽出された6 つの研究を分析した結果、HDV IgG 抗体(※3)の感度(※4)は97.4%、特異度(※5)は85.0%と高精度であり、HDV の信頼性の高いスクリーニング手法であることが明らかになりました。抗体検査は、専門的な技術や設備資源の乏しい地域でも有効に活用できます。抗体検査を用いたスクリーニング検査を導入することでHDV 患者が早期に適切な治療に繋がり、治療効果や予後の改善が期待されます。

今後の展開

  •  WHO は2030 年までに世界のB 型・C 型ウイルス性肝炎を排除することを目標として掲げています。HDV はHBV 慢性感染者において肝硬変・肝がん・死亡のリスクを高める因子であるため、HDV スクリーニング検査による早期発見が必要です。
  • 当研究室では現在、HDV 抗体をより高精度に測定するために独自のELISA 法(※6)の開発に取り組んでいます。

用語解説

(※1)HDV 抗体検査
   D型肝炎ウイルス(HDV)に感染しているかどうかを確認するための検査で、HDV に対する抗体(体がウイルスに対抗して作る物質)を検出します。
(※2)システマティックレビューおよびメタ解析
   多くの研究結果を集めて体系的に評価する方法で、システマティックレビューは文献を網羅的に調べ、メタ解析はその結果を統計的にまとめて分析します。
(※3)HDV IgG 抗体
   HDV に感染したときに体内で作られる抗体の一種で、特に⾧期的な感染の指標として用いられます。IgG は感染後しばらくしてから産生される抗体です。
(※4)感度
   検査で病気にかかっている人を正確に見つけ出す能力のことです。感度が高いほど、病気を見逃しにくくなります。
(※5)特異度
   検査で病気にかかっていない人を正しく判断する能力です。特異度が高いほど、誤って病気と診断されることが少なくなります。
(※6)ELISA 法
   酵素を使って抗体や抗原を検出する検査法で、広く使用されている信頼性の高い方法です。抗体やウイルスの存在を色の変化で確認します。

【お問い合わせ先】

広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学
Tel:082-257-5162
FAX:082-257-5164
E-mail:eidcp@hiroshima-u.ac.jp
 (*は半角@に置き換えてください)
 


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