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【研究成果】口腔内の病変を超音波を用いて検査する方法を開発 ~身体への負担が少ない検査をめざして~

本研究成果のポイント

  • 口腔内の腫瘤性病変に対して超音波検査を口腔内へ応用することで痛みや不快症状を伴わずに病変の検査を行い、高い精度での診断が可能となりました。
  • 本研究では5 つの病変を対象としていますが、今後は様々な病変に対して検査を拡大し、将来的には、患者さんに対する負担を低減しつつ、様々な病変を検査できるようになることが期待されます。

概要

 広島大学病院歯科放射線科の小西勝講師らの研究グループは、これまで超音波検査を口腔内に応用し、口腔癌を可視化し、診断・治療レベルの向上、口腔癌の予後予測に関する研究を行ってきました。今回の研究では、口腔癌以外の口腔内の病変に対して超音波検査を応用し、痛みや不快症状がなく診断する方法を開発しました(参考資料図1参照)。各病変の超音波画像と病理組織画像を対比することで、超音波画像に現れる病変の特徴を詳しく観察しました。その結果、超音波検査を用いることで口腔内の様々な病変について高い精度で診断できることが示唆されました。
 本研究の成果は、2023 年11 月にHEAD AND NECK-JOURNAL FOR THE SCIENCES AND SPECIALTIES OF THE HEAD AND NECK 誌に公開されました。

論文情報

  • 掲載誌: HEAD AND NECK-JOURNAL FOR THE SCIENCES AND SPECIALTIES OF THE HEAD AND NECK(Q1)
  • タイトル:Ultrasonographic features of mass lesions in the oral submucosal epithelium using intraoral ultrasonography.
  • 著者:*小西 勝1, 安藤 俊範2, 宮内 睦美3, 柿本 直也4
    1:広島大学病院歯科放射線科
    2:広島大学病院口腔検査センター
    3:広島大学大学院医系科学研究科口腔顎顔面病理病態学
    4:広島大学大学院医系科学研究科歯科放射線学
    *:責任著者
  • DOI:10.1002/hed.27509.

背景

 口腔内の粘膜に生じる病変は多くありますが、そのほとんどが病変の大きさは、数mm から1cm 程度のものであり、CT やMRI などの画像検査を行っても病変が小さすぎてほとんど見えないこともしばしばあります。したがって、病変の診断を行うためには病変の一部をメスで切除して病理組織検査を行わなければなりません。患者さんにとっては、麻酔の注射をして切除する検査は痛みや出血などの不快感を伴い、精神的、身体的な負担の大きな検査です。そのため、今回の研究では、患者さんの負担を低減しつつ、病変の検査、診断ができないかと考えて、超音波検査に着目しました。
 口腔内の病変の検査を行うために様々な大きさ、形状の探触子(プローブ)を使用しました(参考資料図1参照)。

研究成果の内容

 口腔内病変(口腔癌を除く)に対して超音波検査を施行した50 名の患者を対象としました。病変の内訳は、血管腫20 名、線維腫11 名、粘液嚢胞9 名、脂肪腫5 名、多形腺腫5 名でした。それぞれの病変の超音波画像と病理組織画像を対比して、超音波検査で観察される画像の特徴を分析しました。その結果、各病変の超音波画像上で
の特徴が明らかとなりました。

各病変について以下の特徴が得られました。

  • 血管腫は内部が低エコー(黒く映る)で索状構造(参考資料図1参照)。
  • 線維腫は主に内部が等エコー(周囲と同じ白さで映る)(参考資料図2参照)。
  • 粘液嚢胞は内部が低エコー(黒く映る)で、後方エコー(病変の深部が白く映る)が増強(参考資料図3 参照)。
  • 脂肪腫は病変内部が均一な等エコー像(周囲と同じ白さで映る)または周囲よりもやや高エコー像(周囲よりもやや白く映る)(参考資料図4 参照)。
  • 多形腺腫は、厚い被膜様構造を示唆する低エコー域(黒く映る)に囲まれ、主に内部(腫瘍実質)が等エコー(周囲と同じ白さで映る)であり、嚢胞様の低エコー像(黒く映る)を含むことがある(参考資料図5 参照)。

今後の展開

 本研究の結果、口腔内の5 つの病変について超音波検査画像の特徴を明らかにし、痛みや不快感のない方法で診断できることが示唆されました。これらの結果をもとにさらなる診断精度の向上やその他の口腔内病変の診断へ広げていきたいと考えています。

参考資料

用語説明

(注1)血管腫:血管の異常で生じる病気で、良性腫瘍に分類されるものと血管奇形に分類されるものがある。頭頸部に最も多く発生する。
(注2)線維腫:線維性結合組織から発生する病変で、そのほとんどが刺激による過形成の病変で、真の腫瘍はまれである。
(注3)粘液嚢胞:唾液が貯留してできた袋状のもの。
(注4)脂肪腫:脂肪細胞の増殖からなる良性腫瘍。
(注5)多形腺腫:唾液腺から発生する良性腫瘍で、唾液腺腫瘍の中では最も多い。

【お問い合わせ先】

広島大学病院 歯科放射線科 講師 小西 勝
Tel:082-257-5780 FAX:082-257-5692
E-mail:mkonishi@hiroshima-u.ac.jp


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