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生殖抑制ホルモンの発見−生殖機能障害治療に応用



 生殖機能を抑制する新しい脳ホルモンを,筒井和義・広島大統合脳科学プロジェクト研究センター長(総合科学部教授)らのグループが発見し,2月8日,米科学アカデミー紀要のオンライン版に発表されました。



 この新しい脳ホルモンは脳幹の視床下部でつくられ,脳下垂体からの生殖腺刺激ホルモンの放出を抑制することから,「生殖腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(GnIH)」と名付けられました。この新しい脳ホルモンは生殖腺刺激ホルモンの放出を抑制して精巣や卵巣などの生殖腺の発達と機能維持を抑える働きを持っています。



 30年前に米研究者のシャリー博士とギルマン博士は生殖腺刺激ホルモンの放出を促進する脳ホルモンである生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)を視床下部から発見して,ノーベル医学生理学賞を受賞しましたが,生殖腺刺激ホルモンの放出を抑制する脳ホルモンの存在は長く不明でした。



 30年間存在しないと考えられていた「生殖腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(GnIH)」の発見はこれまでの常識を覆すものです。



 さらに,筒井教授は日米共同研究により院生の産賀崇由さん,助手の浮穴和義博士,ジョージ・ベントレー博士 (米ワシントン大)らとこの新しい脳ホルモンの合成を調節するメカニズムを解析し,その結果、睡眠促進作用を持つホルモンとされるメラトニンが「生殖腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(GnIH)」の合成を高めることを突き止めました。メラトニンは米国では睡眠促進剤として広く販売されており,過度の摂取は生殖機能障害を起こす可能性があります。



 生殖は子孫の維持に不可欠であり,生殖機能の制御に新たに重要な知見を提供するこれらの発見は,生殖機能障害の新しい治療法の開発にも結びつくと期待されています。



 なお,今回の発見を含めた筒井教授の特色ある研究活動を紹介するレポートを,本学「学術室ホームページ」で近日掲載予定としていますので,ぜひご覧下さい。





Proc. Natl. Acad. Sci. USA (米科学アカデミー紀要) 102:3052-3057 (2005)に掲載。

プレスリリース:. 米国のThe Scientist,Reuters,Health Magazine, 国内の読売新聞,中国新聞,共同通信,時事通信,NHKニュースなど。



【お問い合わせ先】

 広島大学統合脳科学プロジェクト研究センター 筒井和義

 tel:(082)424-6571

 E-mail tsutsui@hiroshima-u.ac.jp


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