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本学教員による広島夕学(せきがく)講座を開催しました (4/23)



 4月23日(火)は、「かわいい」に関する研究で、日本のみならず海外でも注目されている総合科学研究科・入戸野 宏准教授による講座「“かわいい”の心理・行動科学」が行われ、28名の方が受講されました。

講演内容の詳細については、先生のHP http://cplnet.jp/kawaii.html をご覧いただくこととして、講演終了後、受講者の方々から寄せられた質問の一部を紹介します。



【1】かわいいものを見ると注意範囲が狭くなるのはなぜか?

昨年発表した論文では、3つの実験を報告しました。最初の実験では、小さな部品をピンセットを使って慎重につまみ出すという、手先の器用さが必要な作業を大学生に行ってもらいました。すると、子犬・子猫のかわいい写真を見た人は、より長い時間をかけて、より正確に作業するようになりました。その原因を探るために、今度は、手を使わず目で見て探すという、注意力を必要とする作業を行ってもらいました。かわいい写真を見ると、この作業の成績も向上したので、手先が器用になるだけではないといえます。最後に、刺激の全体(大域)と部分(局所)のどちらに注意を向けやすいかを測るテストをしました。私たちはふつう、細かい特徴よりも大まかな特徴に注意を向ける傾向があります。しかし、かわいい写真を見た後は、細部に注意が向きやすくなる、つまり注意が狭い部分に集中しやすくなるという結果が得られました。詳しいメカニズムはまだ分かっていませんが、かわいいものを見ると、接近してもっとよく知りたいという気持ちが起こり、それがしばらく持続するので、他の作業にも影響を与えると考えられます。



【2】“かわいい”の効果は、繰り返すことでどう変化するのか?

講演でお話ししたように、かわいいものとは、自分にとって害がなく、ポジティブな感情を引き起こすものです。最初はなんとも思わなかったもの(キャラクターなど)に頻繁に出会うことでなじみが生まれ、“かわいい”と思えることもあるでしょう(単純接触効果)。他方、同じ写真をずっと見ていたら慣れが生じて、当初の感情が生じなくなることもあります。繰り返しの効果は単純には予測できません。

 

【3】“かわいい”の効用の1つに.怒りを鎮める効果があるのか?

 “かわいい”の効用について触れた古典的な文献には、サル(バーバリーマカク)のオス同士が喧嘩をさけるために子どもを両者の間に置くといったエピソードや、オーストラリアの部族は子どもを先頭に立てることで相手の攻撃性を抑えるといったエピソードが紹介されています。しかし、この効果を実験によって確かめた研究は多くありません。「かわいさ余って憎さ百倍」というように、反対の効果が生じるかもしれません。



【4】同世代の女性でも“かわいい”と思うものが違うのはなぜか?

 “かわいい”は対象の属性ではなく、対象と自分との関係性から生まれる感情だと考えれば説明できます。たとえば、異性愛者であっても同性愛者であっても、恋愛対象に抱く気持ちはおそらく同じでしょう。ある人が“かわいい”と言うものに同意できなかったとしても、それは個性の問題です。とはいえ、同じものを見て“かわいい”と言える人どうしが仲よくなりやすいといったことはありそうです。



【5】かわいいものとして視覚刺激の例が多かったが、他の感覚はないのか? かわいい声というのもあるのでは?

ベビースキーマについての研究が視覚的特徴を主に扱ってきたために、“かわいい”の研究は視覚優位で進められてきました。しかし、“ふわふわした”といった触覚も関係していることは想像できます。また、幼い声のように、見てみたい/近づいてみたいと思う、子どもを連想させる刺激も、かわいいと評価されるかもしれません。生まれつき目の見えない方々が“かわいい”をどのように認知しているかについて、今後調べてみたいと思っています。



【6】“かわいい”はビジネスにどう生かせるか?

一つは、“かわいい”という言葉そのものを売りにするアプローチがあるでしょう。ファッションや小物を“かわいい/カワイイ”という価値観でまとめて、それに共感する人たちを相手にする方法です。アキバ系や萌え、福岡市の“カワイイ区”というのも、これにあたります。しかし、この方法ではニッチ市場を超える広がりを期待できません。私自身は、もう一つのアプローチを志向しています。“かわいい”という言葉を前面に出さず、“かわいい”感情の性質を理解して応用する方法です。“かわいい”という宣伝文句は使わないが、接してみると“何だかかわいいな”と思える道具やシステム、サービスを開発することが、これからの時代に求められるはずです。



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