高輝度光科学研究センター(以下「JASRI」 理事長 白川哲久)、広島大学、高エネルギー加速器研究機構、東京大学らは共同で、隕石から次世代磁気デバイスに有用な新磁性材料を発見しました。
本研究成果は、圓山裕教授(広島大学大学院理学研究科)、小嗣真人研究員(JASRI)、三俣千春主任研究員(日立金属(株))、小野寛太准教授(高エネルギー加速器研究 機構)、尾嶋正治教授(東京大学)らの共同研究によるもので、12月18日発行の科学雑誌「Applied Physics Express」に掲載されると共に、日本金属学会 金属組織写真賞の最優秀賞に選定されました。
隕鉄(鉄隕石)の磁気特性は地球上の鉄ニッケル合金と大きく異なることが知られており、その起源は長らく謎のままでした。そこで本研究チームは、物質科学の観点から精密な物性評価を行うことで、隕鉄の磁性の謎に迫ると同時に、磁性材料の探索が行えるのではないかと考えました。
大型放射光施設SPring-8に設置された「光電子顕微鏡(PEEM)」を用い、ナノレベルの直接的な分析を試みたところ、通常の鉄ニッケル合金では見られない新しい磁区構造が発見されました。(PEEMは2007年ノーベル化学賞で注目を集めた先端的顕微鏡です。)実験結果をシミュレーションによる磁区構造と比較検討した結果、その磁区構造は隕鉄特有の鉄ニッケル相「テトラテーナイト」を起源とする事が明らかになりました。
この宇宙由来のテトラテーナイト相は、希少金属(レアメタル)フリーで極めて優れた機能性を示すことから、次世代磁気デバイスの高密度化・省電力化と共に省資源化に繋がるものです。現在、応用を目指した人工創成や物性評価も始まっており、将来のグリーンナノテクノロジーへの豊穣な波及効果が期待されます。
【問い合わせ先】
小嗣真人(コツギ マサト)
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