平成20年度(入学式)

学長訓示(平成20年度入学式)2008.4.3

本日、ここに平成20年度入学式を挙行するに当たり、新入生の皆さんの広島大学への入学を、大学を代表してお祝い申し上げますとともに、心より歓迎いたします。広島大学での学生生活が、皆さんの人生にとって輝かしく、そして確かなものになるよう心より祈念しています。また、本式典にご列席のご家族ならびに関係者の方々に対しても心よりお慶び申し上げます。

広島大学は、明治7年に創設された白島学校を嚆矢として、幾多の変遷を重ね、それまであった広島文理科大学、広島高等学校、広島工業専門学校、広島高等師範学校、広島女子高等師範学校、広島師範学校及び広島青年師範学校を包括し、広島市立工業専門学校を併合して、昭和24年5月31日、原子爆弾で被災した広島市東千田町をメインキャンパスに新制広島大学として設立されました。
その後、初代森戸辰男学長が唱えられた「自由で平和な一つの大学」という建学の精神を継承し、平成7年にはこの東広島の地に統合移転が完了しました。そして、1.平和を希求する精神、2.新たなる知の創造、3.豊かな人間性を培う教育、4.地域社会・国際社会との共存、5.絶えざる自己変革、という理念5原則の下に、国立大学である広島大学に課せられた使命を果たすべく教育、研究、社会貢献に取り組み、わが国有数の総合大学に発展して参りました。そして、来年は本学の歴史の節目となる、創立60周年を迎えることになります。
20世紀終盤からの科学技術の進歩は目覚ましく、情報化技術の進歩とともに急速かつ幅広く展開されています。このことは、まさに人類社会の発展につながっていますが、同時に環境、エネルギー、食料、テロなどの21世紀の新しい課題も生まれており、グローバル化、国際化の進展とともに、社会は一層多様化してきています。今後、これら人類の課題解決に向けて、高等教育機関である大学の果たす役割は益々大きくなっていくものと思います。
この様な社会背景の下、国立大学は、大学の教育、研究に対する国民の要請に応えるとともに、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図ることを目的として、平成16年に法人化されました。その目的に適うように、大学における教育の質の保証や国際化、社会との連携などを進めるべく改革に取り組んでいますが、社会のグローバル化とともに大学間における競争は進み、国際間競争に展開しています。かかる環境の下で、将来「希望に満ちた未来社会」の構築を果たすためには、国を挙げて教育の有り様など教育の重要性について、真剣に考えなくてはならない時であると思います。
広島大学は、11の学部と12の研究科、病院、日本の国立大学最大規模の県内4都市に分布する11の附属学校、そして、放射光科学研究センターを始めとするセンター群、さらに被爆地広島市には、放射線影響研究では、その歴史と伝統から全国に誇れる施設である原爆放射線医科学研究所を擁する、わが国の基幹大学であるとともに、地域の大学として人材育成を通じた社会貢献を果たさなくてはなりません。同時にまた、21世紀の人類共通の課題である環境、エネルギー、食料などの諸課題を解決するべく、これらの領域の科学研究を進めることも広島大学に与えられた使命であると思います。このような人類の抱える課題を克服し、いかにして次の世代に「希望に満ちた未来社会」を継承していくかが問われています。そのためには人材育成を礎として、これまでに積み重ねた業績を活用し、広島大学の特徴的な教育、研究を高いレベルに維持・発展させ、世界をリードする教育研究拠点形成を目指さなくてはなりません。
広島大学では、教養教育、専門教育を通じて、豊かな人間性を備え、幅広い知識を持ち、社会に貢献できる人材の育成に努め、人類の未来に資する科学研究を果たすべく、教育研究環境の整備に努めています。入学者選抜制度の工夫や教養教育の充実をすすめ、学生の視点にたった大学運営に取り組まなければならないと思います。
また、広島大学は、世界で最初の被ばく都市である広島の地に開学したがゆえに、昭和50年、国立大学では最初に平和科学研究センターを設置するなど、平和科学研究の充実のための取り組みを進めています。本学では、これまでにも教養教育に、平和に関する授業を取り入れていましたが、今後も教養教育における「平和学」の位置付けの検討を重ね、広島大学に入学したことを契機に、学生の皆さんが平和について考えることで、本学の理念の一つである「平和を希求する精神」を培っていただきたいと思います。そして、そのことを基に、皆さんが広島大学で学んだ証として、将来にわたってご家族や友人とともに、国際平和について語る機会が少しでも多くなることを願っています。
広島大学のメインキャンパスである東広島キャンパスは、緑豊かで、東京ドームのほぼ53個分という広さを誇る、単一キャンパスとしてはわが国有数の広大なキャンパスです。毎年この入学式の前後には、植樹された1,000本あまりの桜が咲き誇り、美しい景観を楽しめます。桜が散った後には緑が鮮やかとなり、その後はキャンパス内の渓流に蛍が舞い、秋には工学部建物沿いの楓が赤く色づき、冬には積雪を見るという四季を五感で堪能でき、勉学に勤しむ皆さんの心をきっと和ませてくれるでしょう。
本日、ここに3,820名の新入生を迎え、社会に貢献できる優れた人材の育成を果たし、「希望に満ちた未来社会の構築」という大きな夢に向かって、学生・教職員一体となって力強く歩み続けたいと思います。
あらためて、皆さん入学おめでとうございます。

平成20年4月3日
広島大学長 浅原 利正


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