平成20年度(原爆死没者追悼式)

追悼の辞(平成20年8月6日)

原爆死没者追悼の辞

戦後63年が経過し、本日、63回目の「原爆の日」を迎えました。

ご遺族、同窓会代表をはじめとする関係者、教職員並びに在学生代表の皆さんのご出席をいただき、「広島大学原爆死没者追悼式」を挙行するにあたり、お亡くなりになられた方々の御霊に対して、謹んで哀悼の誠を捧げます。

広島大学は、昭和24年新制国立大学として設立され、翌25年の開学式に於いて、初代森戸学長は「自由で平和な一つの大学」という考えを述べています。この言葉は広島大学の建学の精神として受け継がれており、平成7年の東広島キャンパスへの統合移転完了を機に定められた広島大学の理念5原則の第1番目に「平和を希求する精神」が掲げられています。この理念と精神の下に、本学は、平和な世界の実現のために、着実な努力を続けております。

広島大学が、この理念と精神を、研究、教育、社会貢献など様々な分野において実現していくため、平和希求担当の理事・副学長を任命し、平和に関する研究を推進するとともに、平和に関連した事業を企画し実行する重要な任務を託しています。

「平和を希求する精神」に基づいた取組みとして、本年は明日7日に、ノーベル平和賞を受賞された平和を考える科学者の国際的な団体であるバグウォッシュ会議の会長ジャヤンタ・ダナパラ氏をスリランカから招待して、平和を考える講演会を行います。また、昨年度に引き続き外務省からの委託による「平和構築分野の人材育成のためのパイロット事業」や、文部科学省の国際化展開事業として採択されたいわゆる海外の大学との間のダブル・ディグリーを目指す「平和学共同修士プログラムの開発・国際展開」を実施しております。加えて、スウェーデンの平和と紛争の問題、特に軍縮の問題を研究する機関である「ストックホルム国際平和研究所」が刊行している軍縮に関する「2007年SIPRI(シプリ)年鑑」を広島大学で日本語に翻訳して出版する活動も展開しております。この時期に合わせて、明日からは海外6カ国7大学の16名の学生と12名の教職員を迎え、日本の立命館大学と広島大学の53名の学生が参加し、平和と市民について討議する「第3回INU学生セミナー」を開催いたします。この学生セミナーの海外からの参加者は、昨日、広島平和記念資料館を訪れ被爆者の方のお話を伺い、本日は広島平和記念式典にも参加しております。これらの事業は、平和な世界が実現されるよう、これからも継続的に開催していく予定です。

さらに、広島大学では教養教育の一環として平和教育授業の開講を計画し、広島大学に入学した学生が、平和について深く考え、学ぶ機会を提供すべく努めているところです。

平和な世界に向けての様々なまた地道な努力が、世界でも、本学でも積み重ねられていく一方では、世界の各地でテロや紛争が絶えず、悲惨な事件が後を絶ちません。また地球の環境も脅かされて、人類の生存に深刻な問題を突きつけております。世界最初の被爆都市「ヒロシマ」の地に開学した大学として、広島大学は、その理念とする「平和を希求する精神」を大切にし、教育、研究、社会貢献を通して、平和の実現に向けた努力を重ね、平和な社会を次の世代に残すべく、一層精進してゆくことをお誓い申し上げます。

本年また新たに57柱の方々を、この慰霊碑にお祀りすることとなりました。昨年までの方々と合わせて、1722柱の御霊の、とこしえに安らかならんことを願い、また、ご遺族の皆様のご多幸を念じまして、追悼の辞といたします。

平成20年8月6日
広島大学長 浅原利正


up