平成20年度(学位記授与式)

学長告辞(平成20年度学位記授与式)2009.3.23

本日、晴れて学位記を授与される卒業生、修了生の皆さん、誠におめでとうございます。また、ご家族ならびに関係者の方々に対しても心よりお慶び申し上げますとともに、日頃からの本学へのご支援に深く感謝申し上げます。また、ご多忙にも関わらず、本日の学位記授与式にご臨席いただきましたご来賓の皆様方にも厚くお礼を申し上げます。
広島大学は、昭和24年5月31日、新制広島大学として設立され、本年、創立60周年を迎えることになります。
今、改めて皆さんの在学中の主な出来事を振り返りますと、iPS細胞の樹立、益川、小林、下村、南部氏がノーベル物理学賞、化学賞を受賞、北京オリンピック、鳥インフルエンザ、世界各地でのテロ、パキスタン・ジャワ島地震、中国四川省大地震、食品偽装、サブプライム問題に端を発した金融不安など、科学の急速な進歩に加え、自然災害、人為的災害が相次ぎ、世界は大きく揺れ動いています。20世紀後半から21世紀にかけての科学技術の急速な進歩は人類に多くの恩恵をもたらすと同時に、新たな人類の課題をも生んでいるように思います。
一方、学内では、国立大学が平成16年に法人化されるという大きな出来事がありました。そして、大学院講座化の完了、到達目標型教育プログラムの導入、日本の大学初のアクセシビリティーリーダー育成プログラムの開始、広島大学基金の創設などが進められてきました。研究面では、ケンタウルス座巨大ブラックホール観測の成功、HiSIM半導体LDMOSの国際標準選定などの世界トップレベルの研究が達成されてきました。
このような環境の中で、皆さんは広島大学で学生生活を送られ、学問や課外活動等を通じて幾多の経験を重ね、本日を迎えられました。卒業後は、皆さんが学生時代に身に付けた豊かな人間性を一層育み、社会での様々な困難に遭遇しても、それを克服できるような人に育っていくよう期待しています。
20世紀終盤の人類社会は、食料・エネルギー問題に直面し、環境破壊・汚染、テロなどの新しい課題を生みました。その意味するところは、「物の価値」を頂点として発展・自己肥大を続けてきた20世紀型資本主義社会において、その社会基盤に大きな歪みが生じつつあることを示しているように見えます。豊かさの象徴が「もの・貨幣」であった20世紀が終わり、21世紀は豊かさの象徴がものに触れて感動する心、人と人とのつながりを大切にする心、そして周りを思いやる心、そのような「こころ」の豊かさが大切にされる社会を目指さなくてはなりません。「もの」の豊かさを追求してきた20世紀は終わりました。21世紀は国際化が一層進む中で、人類が力を合わせてこれらの課題解決に向けて取り組むと同時に、周りを思いやる「こころ」を大切にして、「心の豊かさ」が尊重される社会を目指すべきであると思います。そして、その結果として、未来社会が希望に満ちた社会になるよう努めなくてはなりません。
広島大学で学ばれた皆さんが、これから社会の構成員の一人として、あるいは地域社会・国際社会のリーダーとしての自覚を持って、希望に満ちた未来社会構築に重要な貢献を果たされますよう心から願っています。
新しい門出をお祝いするとともに、皆さんの前途が希望に満ちた未来になることを祈念し、お祝いの言葉といたします。

平成21年3月23日
広島大学長 浅原 利正


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