平成21年度(学位記授与式)

学長式辞(平成21年度学位記授与式)2010.3.23

卒業生、修了生の皆さん、誠におめでとうございます。平成21年度学位記授与式を挙行するに当たり、広島大学を代表して、心からお祝い申し上げます。また、本式典にご列席のご家族ならびに関係者の方々にも衷心よりお慶び申し上げますとともに、日頃からの本学へのご支援に深く感謝申し上げます。また、ご多忙にもかかわらず、本日の学位記授与式にご臨席賜りましたご来賓の皆様方にも日頃のご指導、ご支援に対し厚くお礼を申し上げます。

広島大学は、1949年5月31日、新制広島大学として創立され、以来、「自由で平和な一つの大学」という建学の精神を継承し、国立大学としての使命を果たしつつ、わが国有数の総合大学に発展し、昨年、創立60周年を迎えました。

この間、1960年代には学園紛争を経験し、2004年には国立大学の法人化がなされましたが、これらは高等教育機関である大学の、社会に対する役割を厳しく問い直したものであったと思います。私どもは、それをきっかけとして、大学のあるべき教育・研究の姿を求め、模索して参りました。そして今、同世代の半数以上が4年制大学に進学する時代を迎え、一人ひとりの人間に対する教育のあり方を見直し、改めて社会に対する大学の責任を果たすべく努めています。

今、皆さんの在学中の主な出来事を振り返りますとiPS細胞の樹立、コンピューターシミュレーション技術の進歩などの学術研究の目覚ましい発展の一方で、環境破壊や国際紛争、大地震や津波災害、新型インフルエンザの拡大などの人為的災害、自然災害が相次ぎ、世界は大きく揺れ動き、変化しています。20世紀後半から21世紀にかけての学術研究の急速な進歩は人類に多くの恩恵をもたらすと同時に、新たな人類の課題を生んでいます。この時代にあって、当然のことながら広島大学は、我が国の基幹大学として、21世紀人類社会を導く「知の拠点」として未来社会の構築に貢献して行かなくてはなりません。

このような環境の中で、皆さんは広島大学で学生生活を送られ、幾多の経験を重ね、広島大学の歴史に、それぞれが様々な形で大きな足跡を遺されました。その業績は永遠に記録されていきます。

学術研究の進歩に伴い、人類社会はグローバル化が進み、これから社会に出て行く皆さんには、このような環境変化を受け入れ、国際社会を意識して活動することが求められています。グローバル化社会の基盤として国際平和は不可欠です。国際平和を実現するためには、皆さんが日本固有の優れた文化を身につけた上で、国際理解を深め、国際社会に足を踏み入れなくてはなりません。そして、先人のたどった歴史を振り返り、その知恵を活かして、新しく生まれた人類共通の課題解決に向けて取り組まなければならないと思います。

私どもは皆さんに、学生時代には何事にも果敢に挑戦することを勧めました。しかし、いつも期待された成果が得られたわけではなく、むしろ失敗の経験から学ぶことが多かったのではないかと思います。これからの人生においても、苦労や失敗の経験が皆さんを大きく成長させてくれるものと思います。人類社会への貢献という高い志を果たすために、恐れず果敢に挑戦することを忘れないでください。学生時代に身に付けた豊かな人間性を社会に出て一層育み、社会での様々な困難に遭遇しても、それを克服できる人材に育っていくよう期待しています。

人類社会の変化は加速度を増しています。このような社会の環境変化に翻弄されることなく、人類社会への貢献という高い志を持ち、自分の中に確かな価値観を確立し、視点を未来に据えて一歩ずつ歩みを進めて欲しいと思います。平穏を望んで易きに陥るのではなく、理想を求めて失敗を恐れぬ勇気を持つことを皆さんに期待しています。

新しい門出を心から祝福するとともに、皆さんの前途が希望に満ちた未来に繋がることを祈念し、お祝いの言葉といたします。

皆さん卒業、修了おめでとうございます。

平成22年3月23日
広島大学長 浅原利正


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