平成23年(年頭挨拶)

年頭挨拶 2011.1.4

平成23年1月4日

年頭挨拶

広島大学長 浅原 利正

新年あけましておめでとうございます。年頭に当たり、2011年が良い年になりますよう心から祈念しています。

2010年、我が国周辺で領土問題が注目を集め、北朝鮮による韓国爆撃など東アジアで緊張が高まっています。海外ではギリシャやアイルランドなどを始め依然として不安定な経済状況が続き、グローバル化が確実に進展している中でウィキリークス騒動などが起こっています。「共存」をキーワードとして国際平和に向けた取り組みが求められています。一方、「はやぶさ」の帰還や新生命体の発見など学術研究の大きな可能性も認識しました。

このような急激に変化する社会環境の中にあるが故に、環境変化に対応しつつも長期的展望に立って、広島大学の将来計画実現に向けて取り組みを進めていかなければならないと思います。

学術研究の進歩を受ける形で専門教育を構築していかなくてはなりませんが、専門性が深化するほどに多様性を受け入れ、幅広く豊かな人間性を身につけるべく教養教育の充実に取り組まなければなりません。本年度から教養教育プログラムの改革を進めますが、昨年立ち上げた教養教育本部を中心にして検討を重ね、漸次充実させていきたいと思います。さらには教育のグローバル化が進む中で、教育の質保証も求められています。時間をかけて教育プログラムの検証を進め、学生にとって長期的に見て実効のあるプログラムにしていかなくてはならないと思います。

その学生教育の根幹となるものは本学において展開している最先端の研究です。学生は高いレベルの研究に触れることによりその可能性をふくらませることが出来ます。研究支援体制を充実させ、教員が教育、研究に専念できる環境整備の充実を進め、世界を視野に入れた最先端の優れた研究成果に繋げなくてはならないと思います。

また、高等教育分野のグローバル化進展の中で、研究者はもとより、学生交流の促進に取り組み、留学生の受け入れや、課題となっています日本人学生の海外派遣を一層促進させたいと思います。そのため広島大学基金を活用した大学からの支援も充実させていきます。さらには海外拠点や海外校友会組織を活用した教育、研究のグローバル化への対応も将来計画の下に進めたいと思います。

医学研究、医療の急速な進歩により、大学病院はなお一層高度化を求められています。特定機能病院として、不採算部門である先進医療への継続的な取り組みは必要不可欠なものです。加えて、我が国の医療環境が変化している現状を踏まえ、高度医療や地域医療へ貢献できる人材の育成は大学病院に課せられた喫緊の課題であり、本学の重要な使命として受け止めなければなりません。不安定な社会環境の中にあって、地域医療の砦として重要な社会基盤の一つである医療を守ることにより本学に与えられた責任を果たしていかなければならないと思います。

そのためには、これらを現実の課題として受け止めて、将来に向けて広島大学の教育、研究の質向上を図るために、大学の管理運営を社会環境変化に対応して継続的に見直し、改善する仕組みを定着させる必要があります。改めていうまでもなく大学は学生のために設立された機関であり、我々教職員の使命は学生の教育であることを肝に銘じておく必要があります。さらに本学の歴史やこれまでの実績から、世界最先端の研究に取り組み、その成果を踏まえて社会に貢献することが求められています。その世界最先端研究の過程・成果を通じて学生教育を一層質の高いものにする事が可能です。この目的を常に意識した上で、具体的な計画を進めて行かなくてはなりません。これまで実施してきた業務が現在本当に必要なのか定期的に検証し、業務の効率化、見直しを図り、新しい業務の受け入れも必要になってきます。そして、総合職に加えて大学職員の一部専門職化など、大学業務の複雑化やグローバル化に対応した見直しを行い、より機能的な管理運営業務にしなくてはなりません。これらの業務を、職場で一つ一つの目的を確認しながら検証、見直しを繰り返すことで、教育、研究の更なる向上に繋げたいと思います。

年頭に当たり、2011年が学生、教職員そして広島大学にとり希望に満ちた年になりますよう祈念いたしますとともに、持続可能な未来社会構築のために私どもが何をなすべきかという原点を常に忘れずに、共に新しい年に臨みたいと思います。

本年もよろしくご理解、ご支援いただきますようお願いいたします。


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