平成23年度(原爆死没者追悼式)

追悼の辞(平成23年8月6日)

追悼の辞

本日、66回目の「原爆の日」を迎えました。

ご遺族、同窓会代表をはじめとする関係者、教職員並びに在学生代表の皆さんのご出席をいただき、「広島大学原爆死没者追悼式」を挙行するにあたり、お亡くなりになられた方々の御霊に対して、謹んで哀悼の誠を捧げます。

また、本年3月に発生いたしました、東日本大震災で犠牲になられました皆様方並びにそのご家族に心からお悔やみ申し上げますとともに、いまだ避難生活を余儀なくされている方々にお見舞いを申し上げます。

広島大学は、昭和24年新制国立大学として設立され、翌25年の開学式に於いて、初代森戸学長は「自由で平和な一つの大学」という考えを述べています。この言葉は広島大学の建学の精神として受け継がれており、平成7年の東広島キャンパスへの統合移転完了を機に定められた広島大学の理念5原則の第1番目に「平和を希求する精神」が掲げられています。この理念と精神の下に、本学は、平和な世界の実現のために、着実な努力を続けています。

「平和を希求する精神」に基づいた取組みとして、本年も様々な平和に関連する講演会を行うとともに、平和構築分野の人材育成事業や、平和分野での海外大学との共同修士プログラムなどを実施しています。またこの時期に合わせて、海外7カ国8大学の学生・教職員53名、立命館大学、立命館アジア太平洋大学と広島大学の学生と併せて約100名が参加し、広く平和について討議する「INU学生セミナー」「INUサマースクール」を開催しています。参加者は、昨日、広島平和記念資料館を訪れ、被爆者の方のお話を伺い、本日は広島平和記念式典にも参加しています。今後も、平和な世界が実現されるまで、このような取組みを続けていく予定です。

さらに、広島大学では本年度から、平和に関する授業を、広島大学に入学した全ての学生が履修することとし、学生が平和について深く考え、学ぶ機会を提供すべく努めているところです。

平和な世界に向けての様々な、また地道な努力が、世界でも、本学でも積み重ねられていく一方で、世界の各地ではテロや紛争が絶えず、悲惨な事件が後を絶ちません。また、環境破壊や汚染の進行など、地球の環境も脅かされて、人類の生存に深刻な問題を突きつけています。福島原発事故の影響も予断を許さない状況が続いています。

本学は、東北の被災者を支援するため、主として放射線被ばく線量の測定や、専門的知識に基づく現地スタッフや住民への教育、講演を行うなど、これまで約1,000名を継続して派遣しています。これにとどまらず、より広く、世界最初の被爆都市「ヒロシマ」の地に開学した大学として、その理念とする「平和を希求する精神」を重んじ、教育、研究、社会貢献を通して、国際平和の実現に向けた努力を重ね、平和な人類社会を次の世代に継承するべく、一層精進してゆくことをお誓い申し上げます。

本年また新たに36柱の方々を、この慰霊碑にお祀りすることとなりました。昨年までの方々と合わせて、1822柱の御霊の、とこしえに安らかならんことを願い、また、ご遺族の皆様のご多幸を念じまして、追悼の辞といたします。

平成23年8月6日
広島大学長 浅原利正


up