平成23年度(秋季入学式)

学長式辞(平成23年度入学式)2011.10.3

本日、ここに平成23年度秋季入学式を挙行するにあたり、新入生の皆さんの広島大学への入学をお祝い申し上げますとともに、心より歓迎いたします。広島大学での学生生活が、皆さんの人生にとって輝かしく、そして確かなものになるよう祈念しています。

本学は、明治7年に創設された白島学校を嚆矢として、幾多の変遷を重ね、それまであった7校を包括し、1校を併合して、原子爆弾で被災した広島市東千田町をメインキャンパスに昭和24年5月31日、新制広島大学として設立されました。平成7年には現在の東広島市への統合移転を完了し、現在、11学部、12研究科を擁する総合研究大学に発展して参りました。

去る3月11日に発生した東日本大震災は、地震・津波災害に加えて、原発事故をも引き起こし、我が国に大きな犠牲を出したのみにとどまらず、海外にも大きな影響を与えています。今回の地震・津波による被害の甚大さに直面し、改めて自然の驚異、自然の営みの中で人間ができることの限界を知り、無力さを痛感したと思います。加えて、原発事故は安全神話の中で、科学への過信が引き起こした人間の重大な過ちを教えてくれたと思います。さらには、急速に進む過疎化、高齢化社会の抱える課題、一極集中社会の脆さも改めて認識されました。一方で、震災の後で見られた被災者同志の支え合い、そして国内は言うに及ばず海外から被災地に差し伸べられた温かい支援は、戦後急速に発展してきた我が国が、経済発展の一方で失いつつある人間の絆の大切さを教えてくれたと思います。私たちは21世紀を迎えて、これまでの経済最優先の価値観を見直し、多様性を増す社会に相応しい新しい価値観に基づく日本社会を構築することが求められているのではないかと思います。

世界に目を向けても、目覚しい科学技術の進歩の恩恵を受ける一方で、環境汚染、資源の枯渇、テロなどの新しい課題も生んでいます。好むと好まざるとにかかわらず、人類社会は国際交流、グローバル化が進展し、社会は一層多様化、複雑化しています。今後、これら人類社会の抱える課題解決に向けて、重要な社会基盤の一つである人材育成を担う高等教育機関である大学の果たす役割は益々大きくなっていくものと思います。

広島大学は、国立大学に課せられた教育、研究、社会貢献という使命を果たすため、教養教育、専門教育を通じて、豊かな人間性や幅広い知識・知恵を備え、社会に貢献できる人材育成を果たし、世界をリードする教育・研究拠点形成を目指す取り組みを進めています。特に、教養教育の充実を含めた教育の質保証に努め、国際社会で活躍できるグローバル人材の育成に、より積極的に取り組まなければならないと思います。

有意義な人生とは、個個人がその能力を最大限に発揮できる人生であるといえます。自分自身の掲げた目標や活動が未来に繋がることを見いだした時に、人生の意義を感じると思います。本日、広島大学に入学された皆さんが、自ら立てた明確な目標に向かって、失敗を恐れず果敢に挑戦し、挫折や困難を乗り越えて、その経験が皆さんの将来に繋がることを心より願っています。

本日、ここに181名の新入生を迎え、「希望に満ちた未来社会の構築」という大きな夢に向かって、学生・教職員一体となって力強く歩み続けたいと思います。

皆さん、改めて入学おめでとうございます。

平成23年10月3日
広島大学長 浅原 利正


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