平成24年度(入学式)

学長式辞(平成24年度入学式)2012.4.3

本日、ここに平成24年度入学式を挙行するにあたり、広島大学を代表して、新入生の皆さんの入学をお祝い申し上げますとともに、心より歓迎いたします。広島大学での学生生活が、皆さんの人生にとって輝かしく、そして確かなものになるよう願っています。また、ご家族ならびに関係者の方々に対しても、心からお慶び申し上げます。

広島大学は、明治7年に創設された白島学校を嚆矢として、幾多の変遷を重ね、昭和24年5月31日、それまであった広島文理科大学、広島高等師範学校など8校を包括・併合し、原子爆弾で被災した広島市東千田町をメインキャンパスに、新制広島大学として設立されました。

その後、「自由で平和な一つの大学」を建学の精神として継承し、(1)平和を希求する精神、(2)新たなる知の創造、(3)豊かな人間性を培う教育、(4)地域社会・国際社会との共存、(5)絶えざる自己変革、という理念5原則の下に、国民の期待に応えるべく教育、研究、社会貢献機能の向上に取り組み、11の学部と11の研究科を擁する我が国有数の総合大学として発展して参りました。

高等教育機関である大学は「知の創造拠点」として、人類が得た知識・技術・知恵の蓄積を重ね、先端研究や専門人材の育成及び教養ある市民の育成を通じて、人類社会の発展に貢献してきました。そして今、少子高齢化、人類社会のグローバル化が進展する中で、大衆化した大学の役割が改めて問われています。近年、社会からは、未来社会を担う若者の社会人基礎力が求められています。大学では専門教育とともに、自ら判断して行動できる力、すなわち社会人基礎力に繋がる教養教育や課外活動の充実はきわめて重要です。

さらに、グローバル社会が進展する中で、日本では大企業に限らず中小企業も国際展開を余儀なくされ、スタッフとして積極的に優れた外国人を雇用するようになってきており、また既に海外企業は国籍にかかわらず、優秀な人材確保に努めています。つまり雇用の流動化が進んでいます。我が国の大学において、国際社会で活躍できるグローバル人材の育成が求められている所以です。本学においても、卒業生がこのような社会で活躍するために、社会人基礎力を備えたグローバル人材の育成を目指しています。大学は多様な環境を提供できる数少ない優れた施設であり、異文化理解を深め、民族、宗教、文化、芸術などの多様性を受け入れることのできる人材育成の場として最適な所です。このような優れた環境をさらに活かしていくために、21世紀社会に相応しい教養教育の充実を図ることはもとより、それに加えて留学生の受け入れを促進し、グローバルキャンパスの構築を進めています。さらには、海外への語学研修、短期留学研修、長期留学制度を整備し、学生が異文化を体験できる機会を提供していきます。グローバル人材育成を目指す取り組みは、同時に社会人基礎力の涵養にも繋がります。グローバル社会の進展に向けて、必要な備えが求められていると考えなくてはなりません。

本日入学した皆さんには、大学での学問は高校までの教わる学習と異なり、人類社会の抱える課題解決に向けて、自ら学ぶという姿勢に変わることを理解していただきたいと思います。

計算速度が世界最速となった我が国のスーパーコンピューター「京」を活用して、抗がん剤を開発するプロジェクトが本年スタートしました。コンピューターの起源は、1640年代の歯車式計算機とも言われていますが、その後に改良が重ねられ、スーパーコンピューターの開発に繋がりました。これまで、コンピューターで新薬を開発するなど想像できなかったことですが、この方法ですと動物実験を大幅に省略し、20年から30年かかっていた新薬開発が、5分の1から10分の1の期間で可能になり、優れた新薬の開発に繋がるのみでなく、新薬開発の費用も大幅に節約できるそうです。学術研究の進歩は加速しています。

このような多くの優れた研究成果を振り返ると、まず基礎的な優れた発見がなされ、応用研究として確立し、人類社会への貢献に繋がるまでには地道な努力の積み重ねが必要です。そして、困難にくじけない勇気とそれを「成し遂げるまであきらめない」という信念が不可欠です。

年齢を問わず、そしてどのような環境にあっても、人は誰でも夢を持つことはできます。その夢は我々に力を与えてくれるものです。皆さんの将来に向けて、高い志の下に「大きな夢」を持ってください。その夢に向かって失敗を恐れず、勇気を出して何事にも果敢に挑戦することを勧めます。そして、その事から多くを学び、その結果が皆さんの夢の実現に繋がることを願っています。

本日、ここに3,765名の広島大学への新入生を迎え、「未来社会への貢献」という大きな目標に向かって共に歩み続けたいと思います。
改めて皆さん入学おめでとうございます。

平成24年4月3日
広島大学長 浅原 利正


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