平成24年度(秋季入学式)

学長式辞(平成24年度入学式)2012.10.1

「明日の社会を担う」

銀杏や楓の葉が色つきはじめ、広島大学のキャンパスに秋の佇まいが深まりつつあります。この広島大学に本日、大学院には、博士課程前期に131名、博士課程後期に64名、博士課程に21名、合計216名の方々をお迎えすることになりました。皆さんの入学を心より歓迎するとともに、広島大学を代表してお祝い申し上げます。

広島大学は、明治7年創立の白島学校を嚆矢として、幾多の変遷を経て、昭和24年、広島文理科大学など8校を包括・併合して、世界最初の被爆都市である広島市に、新制広島大学として設立されました。今日まで世界をリードする先端研究を通じて高度人材育成に取り組み、地域社会、国際社会の発展に貢献して参りました。そして、現在では11学部、11研究科を擁するわが国有数の総合研究大学となっています。本学では、様々な学問に出会えるという総合大学の利点を活かして、教養教育、専門教育、課外活動などを通じて有意義な学生生活を送っていただきたいと思います。

学術研究の進歩は目覚ましく、人類社会は多くの恩恵を享受してきました。その中で、昨年発生した東日本大震災は、現在の人類社会、なかんずく我が国日本が直面している多くの課題を明らかにしました。自然災害への備えの不備、エネルギー政策の複雑性、我が国産業構造の持つ課題、地域社会に見られる深刻化する超高齢化社会・医療過疎などの課題、グローバル社会への対応の遅れなど、急ぎ国を挙げて解決に取り組まなければならない課題を明確にしたと思います。学術研究の進歩により、私たちは豊かさを享受し、便利さを取り入れてきたが故に大きな代償も払っているように思います。私たちは21世紀知識基盤社会の中で、多様性を受け入れ、共生が成り立つ、持続可能な新しい価値観に基づく未来社会の構築を目指さなくてはなりません。

グローバル化が進み、多様性が増し、大きく変化する人類社会において活躍する人材は、知識を深め、感性を磨き、寛容精神を持ち、豊かな人間性を備えることが求められています。大学における教育は専門的知識・技術を学ぶとともに、知的活動を自己の人間的な成長と人類の未来に活かそうとする意欲と態度を涵養するものであると思います。本学では教養教育、専門教育を通じてその様な人材育成に取り組み、一般社会や国際社会に貢献できる、品位ある優れた社会人の育成に努めています。

多様性、複雑性を増す21世紀人類社会の抱えるこれらの課題を克服することは、「知の創造拠点」である大学に課せられた重要な使命といえます。大学で学ぶものは、ノーブレス・オブリージュ、知識を得ることは、それだけ社会的責任も大きくなることを改めて自覚しなくてはなりません。これら人類社会の課題と向き合い、志を高く、明日の社会を担う気概を持って人間としても大きく成長されますよう期待しています。

これからの学生生活が、皆さんにとって充実したものになるよう心から願い、お祝いの言葉といたします。

おめでとうございます。

平成24年10月1日
広島大学長 浅原 利正


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