平成25年度(入学式)

学長式辞(平成25年度入学式)2013.4.3

  本日、ここに平成25年度入学式を挙行するにあたり、新入生の皆さんの広島大学への入学をお祝い申し上げますとともに、心より歓迎いたします。広島大学での学生生活が、皆さんの人生にとって有意義なものになるよう祈念しています。
本学は、明治7年に創設された白島学校を嚆矢として、幾多の変遷を重ね、それまであった8つの前身諸学校を包括・併合して、原子爆弾で被災した広島市東千田町をメインキャンパスに、昭和24年5月31日、新制広島大学として設立されました。平成7年には現在の東広島市への統合移転を完了し、現在、11学部、11研究科を擁する、学生数約15,000人の我が国でも有数の総合研究大学に発展して参りました。
 
平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、我が国に大きな犠牲を強いるとともに、私たちは改めて、自然の営みの中で人間ができることの限界を知り、無力さを痛感し、科学への過信が引き起こした重大な過ちを教えられたと思います。加えて、急速に進む過疎化、高齢化社会の抱える多くの課題、一極集中社会の脆さも改めて認識されました。一方で、震災の後で見られた被災者同志の支え合い、それに国内は言うに及ばず海外から被災地に差し伸べられた温かい支援は、戦後急速に発展してきた我が国が、経済発展の一方で失いつつある人間の絆の大切さをも教えてくれました。私たちは、この東日本大震災での大きな犠牲を決して忘れることなく、これまでの経済優先の価値観を見直し、多様性を増す社会に相応しい感性を磨き、心の豊かさを大切にする、新しい価値観に基づく社会を構築していかなくてはなりません。

人類社会はグローバル化が進展し、多様性、複雑性を増しています。私たちは学術研究発展の恩恵を受ける一方で、金融不安、大気汚染、環境破壊、資源の枯渇、テロなどの新しい課題も生じています。これら人類社会の抱える課題解決に向けて、「知の基盤」として機能してきた大学の果たす役割は益々大きくなっていくものと思います。
 
本学は「学生が成長する大学、国際社会で存在感のある大学」を目指します。大学は高校までの学習とは違い、答えのない課題に挑戦し、主体的に学び、学問を修める所です。本学では教養教育、専門教育を通じて、可能な限り体験型学習を取り入れつつ、豊かな人間性を涵養し、幅広い知識・知恵を身に付け、社会人基礎力を高めた上で、社会に貢献できる優れた人材育成に全力で取り組みます。
 
本日、広島大学に入学された皆さんは、これから始まる学生生活を通じて、何を学び、何を身につけるか、目標を明確にしてください。そして、自ら立てた目標を実現するため、失敗を恐れず何事にも果敢に挑戦し、挫折や困難を乗り越えることのできる、たくましい人間に育っていくことを心より願っています。
 
本日、ここに3,917名の新入生を迎え、「未来社会への貢献」という大きな目標に向かって、学生・教職員一体となって力強く歩み続けたいと思います。
改めて、皆さん入学おめでとうございます。

 
平成25年4月3日
広島大学長 浅原 利正


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