第168回学位記(博士)授与式

学長からのお祝いの言葉(第168回 学位記(博士)授与式) 2013.7.16

本日、広島大学より15名の方に学位を授与させていただきました。広島大学を代表して心よりお祝い申し上げます。

人類社会の変化は加速度を増し、グローバル化の影響はあらゆる領域に及んでいます。新エネルギーへの対応、環境汚染や経済不安、それに内紛や地域紛争などは有効な解決策を見いだせないまま時は過ぎています。我が国においても東日本大震災からの復興は計画通りには進まず、高齢化の進展は急速で、我が国全体の高齢化社会への対応に懸念も伺えます。これら我が国や人類社会の抱える課題解決に向けて、私たち一人ひとりが力を合わせて取り組まなければなりません。人類社会は益々多様性、複雑性を増し、新しい価値観の下での未来社会の構築が必要になっているように見えます。

このような現在にあって、未来社会を担う若者に対しての期待は大きく、社会人基礎力が求められています。社会人基礎力とは簡単に言えば「人類社会の中で自らが判断して生きぬく力」であると思います。そのためには知力、体力、精神力に加えて柔軟な判断力、そして他者を受け入れる寛容さも求められています。

私たちは皆さんに、学生時代には何事にも果敢に挑戦することを勧めました。果敢に挑戦することは失敗を恐れないことを意味します。結果としての成功体験より、積極的に挑戦した結果の失敗や挫折の経験がむしろ皆さんを大きく成長させてくれると信じているからです。これからも高い志の下、失敗を恐れぬ勇気を持つことを期待しています。

2011年に本学で講演していただいた、2008年ノーベル化学賞受賞者の下村脩先生の発見されたオワンクラゲの発光物質イクオリンは、その後GFP蛋白として生物学分野で様々な解析に応用され、偉大な発展研究に繋がりましたが、それまでにはおおよそ30年を要しています。基礎的な優れた発見がなされ、応用研究として確立し、人類社会の貢献に繋がるには地道な取り組みと長い年月が必要です。そして、人類の発展に資する優れた研究、業績に到達するには、それを成し遂げるまであきらめない「信念」と困難に立ち向かう「勇気」が不可欠です。

人類社会はボーダレス化の中で一層交流が進み、私たちの活動は地球規模で展開しています。国際間競争は益々激しくなることでしょう。今後グローバル化が進展する社会に出てゆく皆さんが、先人から継承されてきた日本の優れた芸術・文化を理解し、優れた資質を身に付け、日本人としての誇りを忘れずに、社会からの期待に応えるよう活動して欲しいと願っています。

視点を未来に向けて、「人類社会の未来への貢献」という高い志を持って、大きな一歩を踏み出してください。そして、これから遭遇する様々な困難を克服できる人材に育っていくよう願っています。

皆さんの前途が希望に満ちた未来に繋がることを祈念し、お祝いの言葉といたします。

平成25年7月16日
広島大学長 浅原 利正


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