平成25年度(原爆死没者追悼式)

追悼の辞(平成25年8月6日)

追悼の辞

広島に暑い夏が巡り、そして本日、68回目の「原爆の日」を迎えました。

ご遺族、同窓会代表をはじめとする関係者、教職員並びに在学生代表の皆さんのご出席をいただき、「広島大学原爆死没者追悼式」を挙行するにあたり、お亡くなりになられた方々の御霊に対して、謹んで哀悼の誠を捧げます。

一昨年の3月に発生した東日本大震災の傷跡は、まだまだ、癒えておりません。この災害により、2万人近くにものぼる方々が犠牲となり、さらに福島第一原子力発電所事故の影響も含めた避難者総数は約34万人にも達しています。犠牲になられました皆様方並びにそのご家族に心からお悔やみ申し上げますとともに、いまだ避難生活を余儀なくされている方々にお見舞いを申し上げます。この事故は私たちの平和への思いをさらに強くすることになりました。

新制広島大学の開学式において、森戸辰男初代学長は「自由で平和な一つの大学」という考えを述べています。この言葉は広島大学の建学の精神として受け継がれ、平成7年の統合移転完了を機に定められた理念5原則の第1番目に「平和を希求する精神」が掲げられています。この理念と精神の下に、本学は、平和な世界の実現のために、着実な努力を続けています。

進展する人類社会のグローバル化の中で国際平和に繋がる国際交流の取り組みを進めています。海外の大学との共同したプログラムとしては、平和式典に合わせて、海外8カ国8大学の学生・教職員と、広島大学など国内3大学の学生・教職員の合計約180名が参加し、広く平和について討議する「INU学生セミナー」「INUサマースクール」を8年前から開催しています。また、平和分野での海外大学との共同修士プログラム、台湾政治大学との共同セミナー、さらに「JICA」や「ユニタール広島オフィス」と共同して広島大学平和構築連携融合事業を実施しています。

広島大学の新入生のためのプログラムとして、一昨年より、全学生が平和に関する授業を受講することとしました。この授業では、広島平和記念資料館などの平和に関するモニュメントを訪問して、平和に関するレポート書くことも課しています。このような教育を通して、広島大学の全学生が平和について深く考え、学んで欲しいと強く願っています。

平和な世界に向けて、様々な努力が積み重ねられている一方で、世界の各地ではテロや紛争が絶えず、悲惨な事件が後を絶ちません。また、温暖化、自然環境の破壊の進行など、私たちの住む地球自体の存在も脅かされています。福島の原発で起こった放射能災害も環境破壊の一例です。このようなグローバル化した社会においては、ますます人類がお互いを受け入れて「共生」することが求められています。

本学は、新たな取り組みとして、昨年10月から「放射線災害復興を推進するフェニックスリーダー育成プログラム」をスタートさせました。このプログラムでは、これまで本学が蓄積してきた放射線分野での実績と経験に加えて、人文社会科学の分野を含む全学的教育研究体制の下で、「放射線災害復興学」を確立し、国際的に活躍できるグローバルリーダーの輩出を目指しています。

このような活動にとどまらず、被爆都市「ヒロシマ」の地に開学した大学として、その理念とする「平和を希求する精神」を重んじ、教育、研究、社会貢献を通して、さらに国際平和の実現に向けた努力を重ね、平和な人類社会を次の世代に継承するべく、一層精進してゆくことをお誓い申し上げます。

本年また新たに25柱の方々を、この慰霊碑にお祀りすることとなりました。昨年までの方々と合わせて、1865柱の御霊の、とこしえに安らかならんことを願い、また、ご遺族の皆様のご多幸を念じまして、追悼の辞といたします。

平成25年8月6日
広島大学長 浅原利正


up