平成25年度(秋季入学式)

学長式辞(平成25年度入学式)2013.10.1

本日、ここに平成25年度広島大学秋季入学式を挙行するにあたり、新入生の皆さんの広島大学への入学をお祝い申し上げますとともに、心より歓迎いたします。広島大学は「学生が成長する大学、国際社会で存在感のある大学」を目標に掲げています。広島大学での学生生活が、皆さんの人生にとって有意義なものになるよう祈念しています。

本学は、明治7年に創設された白島学校を嚆矢として、幾多の変遷の後、それまであった8校を包括・併合して、原子爆弾で被災した広島市東千田町をメインキャンパスに、昭和24年5月31日、新制広島大学として設立されました。平成7年には現在の東広島市への統合移転を完了し、現在、11学部、11研究科を擁する、学生数約15,000人の我が国でも有数の総合研究大学に発展して参りました。
 

人類社会はグローバル化が進展し、益々多様性、複雑性を増しています。私たちは学術研究発展の恩恵を受ける一方で、金融不安、大気汚染、環境破壊、資源の枯渇、テロの脅威など、新しい課題も生じています。これら人類社会の抱える課題解決に向けて、「知の基盤」として機能してきた大学の果たす役割は今後益々大きくなっていくものと思います。
 

加えて、急速に進む高齢化社会の抱える多くの課題、一極集中社会の脆さも認識されています。平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、我が国に大きな被害をもたらし、私たちが改めて自然との共生にしっかりと向き合わなければならないこと、そして原発事故では科学への過信がもたらす怖さを教えてくれたと思います。一方で、震災の後で見られた被災者同志の支え合い、それに国内は言うに及ばず海外から被災地に差し伸べられた温かい支援は、戦後急速に発展してきた我が国が経済発展の一方で失いつつある人間の絆の大切さをも教えてくれました。私たちは、この東日本大震災での大きな犠牲を決して忘れることなく、今なお進まない被災地の復興に目を向けていかなくてはなりません。そして、これまでの経済優先の価値観を見直し、多様性を増す社会に相応しい感性を磨き、物の豊かさを求めるあまり、失われがちであった心の豊かさに注目し、それを大切にする新しい価値観に基づく社会を構築していかなくてはなりません。

大学は答えのない課題に挑戦し、主体的に学ぶ、学問を修める所です。在学期間に生涯にわたって学ぶ姿勢を育み、豊かな人間性を涵養し、幅広い知識・知恵を身に付け、社会人基礎力を高めた上で、社会に貢献できる優れた人材に育っていくよう願っています。
社会環境変化は激しく、予測困難な時代に向かっており、社会はたくましい人材を求めています。本日、広島大学に入学された皆さんは、これから始まる学生生活を通じて何を学び、何を身に付けるか、目標を明確にしてください。そして、自ら立てた目標を実現するため、失敗を恐れず何事にも果敢に挑戦し、挫折や困難を乗り越えることのできるたくましい人間に育っていくことを心より願っています。
本日、ここに212名の新入生を迎え、「未来社会への貢献」という大きな目標に向かって、学生・教職員一体となって力強く歩み続けたいと思います。
改めて、皆さん入学おめでとうございます。

平成25年10月1日
広島大学長 浅原 利正


up