平成26年(年頭挨拶)

年頭挨拶 2014.1.6

平成26年1月6日

年頭挨拶
「成長する大学」2014

広島大学長 浅原 利正

新年明けましておめでとうございます。
2014年が皆様にとり、そして本学、我が国、人類社会にとり良い年になりますよう心から願っています。

人類社会を取り巻く環境変化は予測困難なほど激しく、かつ克服するべき課題も多く生まれています。地球の限られた資源の中でのエネルギー問題、食料、水などの資源の枯渇、さらには深刻化する大気汚染や地球温暖化、それに起因する自然災害など人類社会の将来に向けて環境問題への取り組みは極めて重要な課題であり、人類社会が一体となって取り組まなければなりません。
また民主化運動や領土問題も、未来に視野を向けた息の長い取り組みが求められています。

一方では、先進国や発展途上国を問わず、富の集中が進み、貧富の格差が拡大しています。一部の富める人たちの都合によって人類社会が大きな影響を受けている現実にも向き合わなければなりません。「物の豊かさ」「便利さ」など経済を優先してきた結果生じた歪みを是正するためには、感性に目覚め、「心の豊かさ」が価値観として共有され、一人ひとりが尊重される人類社会を構築していくことが求められます。

遅れている東日本被災地復興には多くの有形無形の支援が求められています。また今後、都市部においても急速に進展すると予想される高齢化社会への対応も急を要する課題です。地域社会における医療・介護など、さまざまな機能を有するネットワークを構築し、人間同士のつながりが機能する社会を作っていかなければなりません。直面している少子化や人口減少に対しては高齢者や女性の活躍促進に真剣に目を向けなくてはなりません。先人から受け継いだ知恵を若者に伝え、これまで以上に「支え合う地域社会」を構築することで、安全・安心な未来社会につなげていかなくてはならないと思います。

このような環境変化の下、国立大学の果たす役割が厳しく問われています。今こそ「広島大学改革」をさらに深化させ、既成概念にとらわれない視点で取り組みを進め、教育力、研究力の向上に努めたいと思います。

社会における人材育成の重要性は言うまでもありません。学生時代に「生涯にわたり学ぶ姿勢・習慣」を身に付けるために、「学生が主体的に学ぶ」プログラムを充実させることが大切です。
 社会からは専門教育の重要性もさることながら、礼儀作法や社会規範を身に付け、困難を克服する若者が求められています。またグローバル化の進展は、若者により強い主体性の確立、日本人としてのアイデンティティを求めているように思います。
大企業の一部には、グローバル化に伴い社内に教養教育講座を設けるなど、改めて社会人としての教養教育の重要性が認識されています。国際社会で活躍する人材に求められるのは、社会環境変化を理解できる知識と知恵、それを受け入れる豊かな人間性、そして何より自ら判断し、行動できる主体性を持った人材です。

本学ではこれまでも教養教育の充実に取り組んできましたが、より一層の充実に努めなければなりません。
また、平成24度10月から実施している博士課程リーダー育成プログラムは、本学の特徴的な大学院教育です。これらを活用して大学院教育の一層の充実につなげ、学生にとり魅力ある大学にしたいと思います。

本学は昨年「研究大学促進事業」の研究大学として19大学の一つに選定されました。これは社会からの本学への大きな期待であり、それに応えなくてはなりません。研究大学としての研究力強化のため、DPやDRの選定と彼らへの全学的支援、インキュベーション拠点の選定と発展、研究スペースの優先配分やURA、技術職員による支援を行い世界トップレベルの研究拠点の形成を目指します。そのために、基盤研究の裾野を広げ、研究基盤を確立したうえで、インキュベーション拠点候補の発掘に取り組みます。
今後は、複合、学際、融合領域研究が生まれる仕組み作りとして、組織再編や、さらには大学や国の枠を越えた研究拠点形成への取り組みも必要です。

世界で活躍するグローバル人材を育成するためには、意欲と能力のある学生により多くの留学機会を提供し日本と異なる生活環境にも対応できるタフな精神力を培うことが重要です。本学の多様な留学プログラムを充実させると共に、協定大学と連携して共同大学院や共同学位プログラムの充実にも取り組まなければなりません。留学する学生への経済的支援は、国からの支援を有効に活用すると共に、外部資金や企業からの支援も拡大する必要があります。平成22年度から開始したSTARTプログラムは、平成26年度には新入学生の1割、250人が参加できるよう充実させる計画です。

また一方で海外からの留学生の受け入れも拡大させます。大学院への留学生の受け入れは研究力の強化につながります。昨年末実施した海外留学フェアの検証を行い、海外への発信力を高めて、4年後には2000人と倍増を目指します。留学生の受け入れに当たっては、本学の教育プログラムを魅力あるものにすることが最も重要です。さらには留学生に対する国の経済支援を十分活用することも大切です。

医療人の育成、診療機能を通じた地域医療への貢献も国立大学の重要な使命です。包括ケアシステムの中で地域医療の砦機能を果たすと共にアジアをはじめとする発展途上国への医療人育成を通じた国際貢献も求められます。

企業との共同研究や受託研究の充実、地域貢献研究など、地域社会との連携で地域の活性化に貢献することも期待されています。従来の仕組みを見直して、これらの地域社会貢献の一層の充実は不可欠です。

昨年11月に文部科学省が公表した「国立大学改革プラン」では、国立大学のガバナンス機能強化や法人化のメリットを生かした柔軟な人事・給与システムを構築することが求められています。これらは社会環境変化に対応できる教育研究組織作りとも相関するものです。
学生、教職員が生き生きと学び、活動し、成長する大学を目指して、学内で一体となった改革作業を進めており、本年早々に明確な方向を示したいと考えます。教職員には明確な目標の下で活動し、未来社会に貢献することを生きがいとして受け止め、大学運営に取り組む事を期待します。
人材育成というゆるぎない目標を見失うことがなければ、社会環境の大きな変化にも左右されることはないと信じます。

少子化・高齢化が進展する我が国の将来を国際社会の中で位置付け、我が国の役割を理解し、日本文化、日本語を正しく身に付けた上で国際共通語である英語力を磨き、幅広い視野と深い洞察力を身に付け、人間性豊かな学生を育成して社会に輩出し、未来社会に貢献していくことが本学の重要な使命です。

新しい年を迎えるにあたり、本学の更なる成長を願い、学生、教職員、そしてすべての人類にとり良い年になりますよう心から祈念して新年の挨拶といたします。


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