平成25年度(学位記授与式)

学長式辞(平成25年度学位記授与式)2014.3.23

卒業生、修了生の皆さん、本日は誠におめでとうございます。平成25年度学位記授与式を挙行するに当たり、広島大学を代表して心よりお祝い申し上げます。ご家族ならびに関係者の方々にも心からお慶び申し上げますと共に、日頃からの本学へのご支援に深く感謝申し上げます。また、ご多忙にもかかわらず、本日の学位記授与式にご臨席いただきましたご来賓の皆様方にも厚くお礼申し上げます。

最近の主な出来事を振り返ってみますと、山中教授のグループによるiPS細胞の開発、質量の基となるヒッグス粒子の発見、3Dプリンターの開発など、学術研究の目覚ましい進歩・発展の一方で、迷走する民主化運動、貧富の格差拡大、頻発するテロ、環境汚染、毎年のように報告される寒波、地震や洪水など、人為的災害、自然災害が相次いでいたことが思い出されます。そしてなんといっても3 年前、2011年3月11日に発生した東日本大震災、それに続く福島原発事故は我が国社会全体に大きな影響を及ぼしました。私達は今後も被災地に思いを馳せ、目を向け続け、わが国が一体となって被災地の復旧・復興に取り組まなければなりません。

人類社会は激しく変化し、益々多様性、複雑性を増しています。日本をはじめとした課題を多く抱えた先進国では、発展を重ねてきたが故に失われたものに目を向ける必要があると思います。発展の過程で構築された20世紀の価値観について改めて深く考え、見つめ直し、お金に依存しないシステム構築や時間と手間をかける事の価値に気づくことも肝要であると思われます。私たちが目指す安全で、安心して暮らせる社会の実現のためには、便利で効率がよく、高機能なものを求めるだけではなく、時間的、空間的ゆとりの必要性に関心を寄せ、一人ひとりの人間の存在を大切にし、多様性を受け入れた上で、「心豊かな生活、しなやかな21世紀社会」を目指すべきであると思います。

未来社会を担う若者に対して、「社会の中で自らが判断して生きぬく力」いわゆる社会人基礎力が求められています。その期待に応えるためには知力、体力、精神力を鍛える事に加えて柔軟な判断力が必要ですし、他者を受け入れる寛容さも求められています。生涯にわたって自らを鍛え、学び続ける習慣を身に付けなくてはなりません。人類社会は国境を越えて交流が進み、私たちの活動は地球規模で展開しています。その中で、これから社会に出て行く皆さんが、先人から継承されてきた知識・知恵を身に付けると共に、優れた芸術・文化に触れることで感性を磨き、視点を未来に向けて、「人類社会への貢献」という高い志を持って、大きな一歩を踏み出してください。そして、これから遭遇する様々な困難を克服できる人間に成長するよう願っています。

皆さんの前途が希望に満ちた未来に繋がることを心から願い、お祝いの言葉といたします。

平成26年3月23日
広島大学長 浅原 利正


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