平成26年度(入学式)

学長式辞(平成26年度入学式)2014.4.3

本日、ここに平成26年度入学式を挙行するにあたり、新入生の皆さんの広島大学への入学をお祝い申し上げますとともに、心より歓迎いたします。広島大学での学生生活が充実し、皆さんの人生の中で確かなものになるよう願っています。また、ご家族ならびに関係者の方々に対しても心よりお慶び申し上げます。

広島大学は、明治7年に創設された白島学校を嚆矢として、幾多の変遷を重ね、昭和24年5月31日、それまであった広島文理科大学、広島高等学校、広島工業専門学校、広島高等師範学校、広島女子高等師範学校、広島師範学校、広島青年師範学校、広島市立工業専門学校など8校を包括、併合して、原子爆弾で被災した広島市東千田町をメインキャンパスに新制広島大学として設立されました。初代森戸辰男学長が唱えられた「自由で平和な一つの大学」を建学の精神として継承し、(1)平和を希求する精神、(2)新たなる知の創造、(3)豊かな人間性を培う教育、(4)地域社会・国際社会との共存、(5)絶えざる自己変革、という理念5原則の下に、国立大学に課せられた使命を果たすべく教育、研究、社会貢献に取り組み、 現在では、11学部、11研究科、大学病院、11の附属学校園、更に原爆放射線医科学研究所、放射光科学研究センターと2つの全国の共同利用・共同研究拠点を有し、我が国でも有数の規模を誇る総合大学、基幹大学として発展を続けて参りました。

広島大学は、世界で最初の被ばく都市である広島の地に開学したがゆえに、昭和50年、国立大学では最初に平和科学研究センターを設置しました。更に教養教育において平和に関する授業を必須化し、学生の皆さんが国際平和について考えることを勧めています。将来、皆さんが広島大学で学んだ証として、ご家族や友人と共に、国際平和について語る機会が少しでも多くなることを願っています。

人類社会は激しく変化し、益々多様性、複雑性を増しています。学術研究の進歩は目覚ましく、山中教授によるiPS細胞の開発、質量の基となるヒッグス粒子の発見、3Dプリンターの開発など、想像を超えて展開しています。この様な学術研究の進歩は、私たち人類社会に便利さと豊かさをもたらす一方で、迷走する民主化運動、貧富の格差拡大、頻発するテロ、環境汚染、急速に進む高齢化社会など、多くの克服するべき課題を生んでいます。特に2011年3月11日に発生した東日本大震災、それに続く福島原発事故は我が国社会全体に大きな影響を及ぼしました。私たちは今後も被災地に思いを馳せ、目を向け続け、わが国が一体となって、被災地の復旧・復興に取り組まなければなりません。今後、このような人類社会の課題解決に向けて、「知の創造拠点」としての大学の果たす役割は益々大きくなっていくものと思います。

未来社会を担う若者、特に大学生は、社会の環境変化について一層関心を持って欲しいと思います。大学は高校とは異なり、学生自らが主体的に学問に取り組み、その成果を通じて人類社会の課題解決を目指すものです。従って、広島大学は世界トップレベルの高度な研究を通じて、社会に貢献出来る優れた人材の育成に取り組んでいます。

今、社会では小さな成功を重ねるより、大きな失敗を経験した人の評価が高まっているといいます。失敗や挫折を経験し、それを克服する事が出来る「失敗力」を身に付ける事の重要性が評価されているのです。失敗を恐れて挑戦をためらうのではなく、在学中に多くの事に挑戦し、様々な経験を通じて自らを鍛え、自分の判断と責任で行動出来る社会人に成長してください。そのような人材が社会から求められています。

有意義な人生とは、自分の能力を最大限に発揮して生きる人生といえます。本日、広島大学に入学された皆さん一人ひとりが、明確な目標を掲げて挑戦を重ね、先人から継承された知識・知恵を学び、優れた藝術・文化に触れることにより感性を磨き、幅広い視野を身に付けて欲しいと願っています。皆さんが生涯にわたり学び続ける姿勢を身に付けることが、将来の有意義な人生に繋がるものと信じています。

本日、広島大学はここに3,907名の新入生を迎え、「未来社会への貢献」という高い志の下、「希望に満ちた人類社会の構築」という大きな夢に向かって、学生・教職員一体となって力強く歩み続けたいと思います。
改めて、皆さん入学おめでとうございます。

平成26年4月3日
広島大学長 浅原 利正


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