第172回学位記(博士)授与式

学長からのお祝いの言葉(第172回 学位記(博士)授与式)2014.7.15

修了生の皆さん、本日は誠におめでとうございます。
平成26年度学位記授与式を挙行するにあたり、広島大学を代表して心よりお祝い申し上げます。

人類社会の変化は加速度を増し、グローバル化の進展はあらゆる領域に及んでいます。
その一方で、新エネルギーの創出、環境汚染や経済不安、民主化への迷走や地域紛争など、大きな課題を抱えたままです。

我が国においても、東日本大震災からの復興という長期的な課題、少子化や人口減少が進み、都市部でも顕著になりつつある高齢化社会進展への対応など、将来を見据えた計画が求められています。

人類社会は益々多様性、複雑性を増し、我が国や人類社会の抱えるこれらの課題解決に向けて、私たち一人ひとりが力を合わせて取り組まなければなりません。

このような環境下で、未来社会を担う若者に対して社会からの期待は大きく、グローバル化が進展する人類社会で生き抜く力、社会人基礎力が求められています。

社会人基礎力を涵養するためには、知力、体力、精神力に加えて柔軟な判断力、そして、他者を受け入れる寛容さも求められています。

2008年ノーベル化学賞を受賞された下村脩先生に、2010年、本学で講演していただきました。

下村先生が、オワンクラゲの発光物質 イクオリン を発見する過程で見つけられたGFP蛋白は、その後生物学分野で様々な解析に応用され、偉大な発展研究に繋がりましたが、それまでにはおおよそ30年を要しています。

基礎的な優れた発見がなされ、応用研究として確立し、人類社会の貢献に繋がるには、地道な取り組みと長い年月が必要です。

そして、下村先生の研究に見られるように、人類の発展に資する優れた研究業績に到達するには、それを成し遂げるまであきらめない「信念」と困難に立ち向かう「勇気」が不可欠です。

人類社会は、ボーダレス化が進む中で一層交流が進み、私たちの活動は地球規模で展開しています。

最近、「グーグルが求める人材5条件」という記事が、New York Timesに掲載されました。
その中に、どの仕事においても1番求めているのは、全体的な認識能力であり、知能指数(IQ)ではない。
認識能力とは学習する能力であり、状況に応じて処理する能力であり、種類の異なる情報の断片を組み立てる能力である、と指摘されていました。

進展するグローバル化社会が求める人材について、自ら深く考えてみる事が必要です。

21世紀、知識基盤社会では、生涯学び続ける社会人が求められています。
広島大学での学びを基に、知識・知恵を身に付ける事はもとより、優れた芸術文化に触れることで感性を磨き、幅広い視野を持つ社会人に成長し、これから遭遇する様々な困難を克服できる人材に育っていくよう願っています。

本日、修了して社会に出てゆく皆さんが、視点を未来に向けて、「人類社会の未来への貢献」という高い志を持って、大きな一歩を踏み出してください。

皆さんの前途が希望に満ちた未来に繋がることを祈念し、お祝いの言葉といたします。

平成26年7月15日
広島大学長 浅原 利正


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