平成26年度(原爆死没者追悼式)

追悼の辞(平成26年8月6日)

追悼の辞

広島に暑い夏が巡り、そして本日、69回目の「原爆の日」を迎えました。

ご遺族、同窓会代表をはじめとする関係者、教職員並びに在学生代表の皆さんのご出席をいただき、「広島大学原爆死没者追悼式」を挙行するにあたり、お亡くなりになられた方々の御霊に対して、謹んで哀悼の誠を捧げます。

また、2011年3月に発生した東日本大震災により、犠牲になられました皆様方並びにそのご家族に心からお悔やみ申し上げますとともに、いまだ避難生活を余儀なくされている方々にお見舞いを申し上げます。この事故は私たちの平和への思いをさらに強くすることになりました。一日でも早い復興を目指し、引き続き、支援活動を続けて参りたいと思います。
 
広島大学は、世界で最初の被ばく都市である広島に開学した大学として、原爆の悲惨さを決して忘れてはならないという思いから、理念5原則の最初に「平和を希求する精神」を掲げています。
「平和を希求する精神」とは、平和について学び、考えるだけでなく、原爆の惨禍を経験した広島から、世界に向けて平和のメッセージを発信していくことを含むと考えます。
 
広島大学では、昭和50年に国立大学では最初に平和科学研究センターを設置し、平和科学の研究・調査と資料の収集を行ってきました。更に、教養教育において平和に関する授業を必修化し、学生たちが国際平和について考える機会を提供しています。また、これまで積み重ねてきた放射線分野での実績を生かして「放射線災害復興学」を確立し、復興を主導できるリーダーを育成する「放射線災害復興を推進するフェニックスリーダー育成プログラム」や、困難な課題を抱える地域に寄り添い、共存社会を実現するための人材を養成する「たおやかで平和な共生社会創生プログラム」などの「博士課程教育リーディングプログラム」を通じて、グローバルリーダーとして世界で活躍できる人材育成に取り組んでいます。
 
本学の活動に限らず、平和な世界の構築に向けて様々な努力が積み重ねられている一方で、シリアやイラク、ウクライナなど、世界各地でテロや紛争が絶えず、悲惨な事件が後を絶ちません。また、環境汚染や急速に進む高齢化社会など多くの克服するべき課題もあります。このようなグローバル社会においては、人類がお互いを受け入れて「共生」することが求められています。
 
平和な共生社会を実現するためには、他者を思いやり、理解しようと努め、多様性を認める寛容な精神が必要です。これからの社会を担う学生たちには、在学中に様々なことに挑戦し、幅広い視野を持って世界の実情を見つめ、平和な社会を実現するためには何が必要かを深く考えて欲しいと思います。
そして、歴史から学ぶと共に、視点を未来に向け「平和な未来社会の構築」に貢献するという高い志を忘れないでほしいと願っています。
 
広島大学はこれからも、被爆都市「ヒロシマ」の地に開学した大学として、その理念とする「平和を希求する精神」を重んじ、教育、研究、社会貢献を通して、さらに国際平和の実現に向けた努力を重ね、平和な人類社会を次の世代に継承するべく、一層精進してゆくことをお誓い申し上げます。
 
本年また新たに25柱の方々を、この慰霊碑にお祀りすることとなりました。昨年までの方々と合わせて、1890柱の御霊の、とこしえに安らかならんことを願い、また、ご遺族の皆様のご多幸を念じまして、追悼の辞といたします。

平成26年8月6日
広島大学長 浅 原 利 正


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