平成27年(年頭挨拶)

年頭挨拶 2015.1.5

平成27年1月5日

年頭挨拶
「飛躍の年に向けて」2015

広島大学長 浅原 利正

新年明けましておめでとうございます。新しい年が人類社会、我が国、広島大学、そして皆様にとって様々な意味で良い年になりますよう心から願っています。

人類社会を取り巻く環境は益々複雑性、多様性が進み、その変化も加速度を増しています。学術研究の進歩は止まるところを知らず、3Dプリンター、 ビッグデータ、 多機能ロボットや人工知能、再生医学など、進化を加速させています。それに伴い、多くの課題も生じています。迷走する民主化運動、拡大する格差社会、イスラム国の台頭、テロ、地球の限られた資源の中でのエネルギー、食料、水問題、台風、集中豪雨、竜巻被害などの自然災害の増加、これらの課題解決に向けて人類社会全体で取り組まなければなりません。

この様な社会環境変化の中で高等教育機関である広島大学の果たす役割を自覚し、着実に責任を果たしていかなくてはならないと思います。その方向性については法人化後の中期目標・中期計画に示し、長期ビジョンにも記載し、具体的計画については数値目標として「研究大学強化促進事業」「スーパーグローバル大学創成支援事業」の中で明確にしてあります。

あらゆる分野で進展するグローバル化社会の中で、世界標準の教育を視野に入れた高等教育の質保証に向けての取り組みは強く求められています。主体的学びを確立し、学生時代に生涯にわたり学ぶ姿勢・習慣を身に付けることは大切です。成績評価の厳格化、授業科目のナンバリング、eラーニングポートフォリオの導入等によって教育の質保証に向けての取り組みを進めなくてはなりません。ダブル・ディグリーやジョイント・ディグリーを充実させ、留学生の受け入れや日本人学生の海外派遣を増加させる計画も進めています。「大学ポートレート」を国際発信し、留学希望者向けサイトExplore HUを開設、帰国留学生交流ウェブサイトを設置し、世界で活躍する校友間の連携を充実させ、帰国留学生の中から国際交流アンバサダーを委嘱するなどの取り組みにより、国際情報発信強化を図ります。

一昨年の「研究大学強化促進事業」で研究力強化のための具体的な計画を明らかにしています。強みのある分野を世界的研究拠点として継続的に創出するために、「インキュベーション研究拠点」、「研究拠点(自立ステージ)」を選定して、全学的に支援します。本学を代表する研究者DP(Distinguished Professor)、 DR(Distinguished Researcher)を選定して、支援を充実します。国内外の若手研究者の招聘、年俸制・個人評価の導入、国際研究活動の活性化を図るための国際学術会議開催の助成や研究成果の国際発信の充実、国内外の外部資金情報収集と獲得支援を進め、研究力の強化を図り、国際競争力を高めていきます。

高齢化社会の進展、医療の高度化、専門分化や地域医療への対応など我が国の医療は重要課題を抱えており、地域医療への国立大学の貢献は大きく、今後は医療人育成や高度医療を通じた国際貢献への期待にも応えていかなくてはならないと思われます。1極集中が進む我が国にあって将来に視点を移すと地域の活性化、地方創生は重要課題です。大学の教育、研究を通じた地域社会への貢献は重要な使命であり、その期待に応えて行かなくてはなりません。優れた人材の輩出や裾野の広い基盤研究を展開し、企業との共同研究、受託研究の充実を図り、優れた研究成果を社会実装につなげていくことも広島大学の重要な役割のひとつです。地域の活性化に国立大学としての広島大学への期待は大きいと言えます。

世界標準の教育を展開し、研究力を高めるためには、成果達成型の業績指標の導入が求められます。平成26年度から「教員の個人評価」を導入し、同時に大学全体や各部局のパフォーマンスをモニタリングすることで教育力、研究力の強化につなげたいと考えています。さらには教員組織を教育組織と分離することで、加速する学術研究の進歩に柔軟に対応できる教育組織、研究組織を構築できるよう計画しています。多様性あふれる大学の教育、研究を確実に担保した上で、教育力、研究力向上につながるガバナンスの強化に取り組む必要があります。

国際社会を視野に入れながら、加速する社会環境変化の中でこの7年8ヶ月、責任者として広島大学運営に係わってきた立場から本学の実績それに将来を考えると、広島大学が果たすべき社会への責任は重く、社会からの期待も大きいと思います。それに応える事は日本や人類社会への大きな貢献につながると信じています。

私たち構成員が「教育・研究を通じた未来社会への貢献」という揺るぎない目標を見失うことがない限り、加速する社会環境変化に翻弄されることはありません。2015年度はこれまでの実績を基に、新しい可能性を求めて新学長のリーダーシップの下で教職員、学生が一体となった飛躍の年になるよう期待しています。

新しい年を迎えるに当たり、本学のさらなる発展を願い、学生、教職員、そして人類社会にとり、良い年になりますよう心から祈念して新年の挨拶といたします。


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