第174回学位記(博士)授与式

学長からのお祝いの言葉(第174回 広島大学学位記(博士)授与式)2015.1.20

2015年、新しい年の始まりに、本日、広島大学から、20名の方に学位を授与いたしました。誠におめでとうございます。広島大学を代表して心からお祝い申し上げます。
 
このたび取得された学位の学術的価値に加えて、学術論文を完成するまでに積み重ねてこられた経験が、皆さんの今後の人生で大きな糧になりますことを信じています。さらには、このたびの皆さんの優れた学術業績が、21世紀知識基盤社会の根幹である学術研究発展の大きな礎となり、希望に満ちた未来社会構築に大きく貢献できることを確信しています。
 
学術研究の急速な進歩は、人類社会におけるグローバル化の進展を益々加速させ、複雑性、多様性も増しています。社会を取り巻く環境変化は予測困難で、克服するべき課題も多く生まれています。直近のフランス、欧州でのテロは人類社会にとって受け入れがたいものですが、克服せねばならない重要な課題です。持続可能な社会にとって本質的なものは何なのかを深く考えなければなりません。さらには地球資源の問題、環境汚染問題、多発する自然災害、貧富の格差拡大など人類社会全体で真剣に取り組まなければならない課題が山積しています。我が国においては人類がかつて経験したことのない超高齢化社会を迎え、加速する少子化も将来社会の重要課題となっています。
 
このような社会環境変化は今後もとどまることなく、むしろ加速していくと思われます。そういう状況の中、皆さんは社会に出て行くことになります。
 
学術研究の発展の結果得られた成果により人類社会は多くの恩恵を享受してきました。経済が発展し、物質的豊かさ、便利さを手に入れた一方で、歪みも生じています。競争が過熱し、金銭への過度な信仰や功利主義が蔓延し、高貴な精神へのあこがれが希薄になりつつあります。21世紀社会はこれまでの価値観を見直し、グローバル化が進展する知識基盤社会にふさわしい新しい価値観の下で持続可能な社会を構築していかなければなりません。地域によって格差はあるものの成熟してきた人類社会は今「足るを知る」ことを再認識し、優れた芸術文化に触れることで感性を磨き、心の豊かさが価値観として共有される持続可能な社会の構築が求められています。先人から受け継いだ知的遺産や知恵を若者に伝え、同時に異文化理解を深め、一人ひとりの存在が尊重される多様性を受け入れる社会を構築し、これまで以上に「お互いが支え合う社会」を目指すべきだと思います。
 
広島大学で高いレベルの学術研究を成し遂げた皆さんが、生涯学び続ける姿勢を忘れず、人間として、社会人として大きく成長し、国際社会、地域社会を支える有為な人材として、未来社会に貢献されますことを心から祈念してお祝いの言葉といたします。
 
本日はまことにおめでとうございます。

2015年1月20日
広島大学長 浅原 利正


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