平成28年度(原爆死没者追悼式)

追悼の辞(平成28年8月6日)

 また「原爆の日」が巡ってまいりました。
 ご遺族、同窓会代表をはじめとする関係者、教職員並びに在学生代表の皆さんのご出席をいただきまして、「広島大学原爆死没者追悼式」を挙行するにあたり、犠牲となられた方々の御霊に、謹んで哀悼の誠をささげます。

 併せて、平成23年3月11日に発生した東日本大震災・福島原発事故、平成26年8月20日に発生した広島市土砂災害、また本年4月14日以降、熊本県から大分県にかけて相次いだ地震によって、尊い命を奪われた皆様方、また、ご家族の皆様に心からお悔やみを申し上げますとともに、いまだ不自由な生活を余儀なくされている方々にお見舞い申し上げます。

 昭和20年8月6日、広島の街は原爆により焦土と化しました。爆心地から1~4キロメートルの市街地に点在していた、広島大学の前身諸学校の多くも壊滅的な被害を受け、数多くの学生・生徒や教職員、そして南方留学生の方々が犠牲になりました。

 あの日から71年を経た今年は、広島のみならず世界にとっても歴史の1ページを刻む年となりました。5月27日、オバマ大統領が米国の大統領として初めて、広島市の平和記念公園で献花を行いました。そして、核なき世界に向けてのメッセージを発信されました。世界平和への新たな一歩を踏み出したと、私は理解いたしました。

 ご承知のように、昭和24年に開学した広島大学は、初代学長の森戸辰男先生が「自由で平和な一つの大学」を建学の精神とし、平成7年には第9代学長の原田康夫先生が「理念5原則」の第1として「平和を希求する精神」を定めました。

 私も学長就任に当たって「平和を希求する国際的教養人」の育成を、本学のスローガンに掲げました。紛争やテロが頻発する現代にあって、まさしく平和の大学である本学に課せられた使命であると強く確信したからであります。

 昨年12月、私はアフリカ・中東地域で最大の大学であるカイロ大学及びアインシャムス大学とのMOU(大学間交流協定)締結のため、エジプトを訪問しました。香川剛廣(かがわ・たけひろ)駐エジプト大使にもご同席いただき、スフィンクスの前で記者会見を開きました。その様子はNHKワールドをはじめ多くのメディアで報道されました。世界の平和を発信する広島大学に対する期待の大きさを、物語るものでありました。

 かつて広島文理科大学、広島高等師範学校が置かれ、また広島大学開学の地であるここ東千田キャンパスに、本年4月、東千田未来創生センターがオープンしました。霞地区で学ぶ医学系学生の教養教育を行うとともに、社会人教育の拠点としても活用してまいります。この地で広島大学の新たな取り組みがスタートしたことは、誠に感慨深いものがあります。

 被爆71年の今年、新たに21柱の方々を、この慰霊碑にお祀りすることとなりました。昨年までの方々と合わせて、1,930柱の御霊の安らかならんことを願い、また、ご遺族の皆様のご多幸を心より願っております。

 教育、研究、社会貢献を通して平和な人類社会を築くために教職員・学生一同、いっそう努力してまいることを改めてお誓い申し上げ、追悼の辞といたします。

 

平成28年8月6日
広島大学長 越智光夫


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