平成29年度(秋季入学式)

学長式辞(平成29年秋季入学式)2017.10.1

本日、広島大学の学生として仲間入りされた286人の皆さん、ご入学おめでとうございます。広島大学を代表して、皆さんのご入学を心より歓迎いたします。また、皆さんのご努力に敬意を表しますとともに、皆さんを支えてこられたご家族、関係者の皆さまにお祝いを申し上げます。

イギリスの詩人、ジョン・キーツは「秋に寄す」という詩の冒頭に「うす霧とやわらかなる豊穣の季節」と記しています。朝もやが立ち、赤や黄色の木々に彩られたこの東広島キャンパスは、キーツの詩の世界そのものではないかと私は思います。今日の入学式に臨んでいる皆さん一人一人が、事故がなく実り豊かな大学生活を送ることができますよう、広島大学は全力を挙げて応援してまいります。

国立大学で最も多い9つの前身校を持つ広島大学のルーツの一つは、1874年(明治7年)開設の白島学校にさかのぼります。原子爆弾投下から4年後の1949年に、新制国立大学として開学し、143年の歴史を刻んできた本学は、世界に誇る建学の精神を持っています。文部大臣を経て初代の学長となった森戸辰男先生が開学式で述べた、「自由で平和な一つの大学」であります。それは「平和を希求する精神」として、今日に至るまで広島大学人の中に脈々と流れていることを、ぜひ皆さんに知ってほしいと思います。

ナチスが政権を掌握する前年の1932年、物理学者のアルバート・アインシュタインと精神分析学者のジグムント・フロイトが、戦争をテーマに交わした往復書簡があります。「人はなぜ戦争をするのか」というアインシュタインの問い掛けに、フロイトは、人間にはもともと攻撃性があると指摘した上で、次のように答えています。「文化の発展が生み出した心の在り方と、将来の戦争がもたらすとてつもない惨禍への不安―この二つのものが将来、戦争をなくす方向に人間を動かしていくと期待できる」と。
それから85年たって、残念ながらいまだ世界に平和は訪れていません。私は2年前、学長就任に当たって「平和を希求し、チャレンジする国際的教養人の育成」を掲げました。また、今年4月、平和実現の責務を反映させた広島大学の新たな長期ビジョンSPLENDOR PLAN 2017を策定したところです。新しい平和科学の理念である「持続可能な発展を導く科学」を確立し、多様性をはぐくむ自由で平和な国際社会を築く役割を果たすことを本学のミッションとして掲げております。今あらためて使命の重大さを痛感しております。

さて来年4月、広島大学に新しい学部と学科が誕生します。新学部は、ビッグデータなどの分析を基に課題解決の道を探るデータサイエンスと、高度な情報処理テクノロジーを総合的に身に付ける人材を養成する「情報科学部」、新学科は英語で授業を行い、世界中から集った学生が一緒に観光や平和、環境など地球規模の課題にチャレンジする力を養う「総合科学部国際共創学科」です。
ビッグデータや人工知能(AI)に象徴される高度情報化とグローバル化の急速な進展によって、世界は大きく変容しています。激動の時代を生きる皆さんにとって、英語を中心としたコミュニケーション能力と情報リテラシーは、専門分野を問わず必須と言えるでしょう。新学部、新学科をテコに、広島大学の改革をさらに前へ進めたいと考えています。

最後に申し上げたいのは教養の大切さです。これからの人生で「想定外」の難題にぶつかったとき求められるのは、自ら切り開いていく力です。それは、幅広い教養と、自分の頭で考え続けることによって培われていくものであると確信しています。

そして、皆さんの中からは必ずや世界をリードする人が出てきます。一人一人が研究のフロントラインを1mmでも前に進めよう、世界を少しでも良い方向に変えよう、という強い意志と情熱を持っていただきたいと思います。それに応える環境を広島大学は整えています。自信を持って未来に向かって踏み出してください。

あらためまして、ご入学おめでとうございます。

平成29年10月1日
広島大学長 越智光夫


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