平成30年度 入学式

学長式辞 平成30年度入学式 (2018.4.3)

 広島大学に入学された3,960人の皆さん、おめでとうございます。学長として、また同窓生の一人として、きょうの佳き日をともにお祝いできますことを心より嬉しく思います。そして、これまで皆さんを温かく見守り、支えてこられたご家族、関係者の方々に、あらためて感謝の気持ちを持っていただきたいと思います。

 皆さんに広島大学を簡単にご紹介します。
 広島大学は広島文理科大学、広島高等師範学校、広島師範学校、広島高等学校、広島工業専門学校、広島医科大学など、国立大学で最多の9つの学校を包括・併合して設立されました。大学の創設は1949年(昭和24年)ですが、最も古い源流の一つである白島学校から数えれば、144年目を迎えます。伝統も校風も異なる多彩な前身校を母体とする「ダイバーシティー」は、広島大学の大きな特徴となっています。
 文部大臣を経て初代学長に就任した森戸辰男先生は「自由で平和な一つの大学」を建学の精神に掲げました。「平和科目」を全学部生の必修にしているのも、この理念に則ったものです。諸先輩が継承・発展させてきた「平和を希求する精神」をさらに深め、新しい平和科学の理念である「持続可能な発展を導く科学」を皆さんとともに創り上げていきたいと願っています。

 今や広島大学は、学生数1万5千人あまりを擁し、海外からの留学生も75の国や地域からの1,700人あまりに上ります。文部科学省の「研究大学強化促進事業」22機関および「スーパーグローバル大学創成支援事業」(トップ型)13校の一角を占め、世界大学ランキングトップ100を目指す実力を持つ総合研究大学として、高い評価を得ております。今年度からは12番目の学部である情報科学部と総合科学部内に国際共創学科がそれぞれ発足するなど、新たな飛躍に向けての挑戦を開始します。
 
 さて、皆さんの中には厳しい受験勉強を経てようやく大学の門をくぐり、ホッと一息ついている人もいるかもしれません。しかし、皆さんは人生というマラソンのスタートラインに今まさに立ったところだと自覚していただきたいと思います。
 広島大学では、ノーベル賞を受賞した世界のトップ研究者による講演会を開催しており、これまでに山中伸弥(やまなか・しんや)博士をはじめとする5人の方をお招きしました。今年度も5月には大隅良典(おおすみ・よしのり)博士、 7月には天野 浩(あまの・ひろし)博士にご講演いただく予定になっています。こうした講演会に加え、各界で活躍するリーダーによる「世界に羽ばたく。教養の力」と題した特別講義も行います。素晴らしい講師の方々から今後の人生における指針となる何かをつかんで、大学生活に活かしていただきたいと願っています。

 18世紀イギリスの詩人ウイリアム・ブレイクに「無垢(むく)の予兆」という4行詩があります。全体は大変長いのですが、冒頭に有名な一節があります。

 一粒(ひとつぶ)の砂の中に世界を

 野に咲く一輪の花の中に天国を見るために

 君の掌(たなごころ)の中に無限を

 一時(ひととき)のうちに永遠を握れ

 人間のイマジネーションは無限であることをこの詩は物語っており、勇気づけられます。限りないイマジネーションやモチベーションがなければ、何事も開けてこないと思っています。ライト兄弟が空を鳥のように飛べると思わなければ、スティーブ・ジョブズが「夢を売ろう」と考えなければ、飛行機もiPhoneもこの世にいまだ存在していなかったかもしれません。想像力が世界を大きく変えると確信し、自分の可能性を信じることが最初の極めて重要な一歩なのです。

 イノベーションが叫ばれる昨今、ともすればhow(どのような方法で)が重視される傾向が強まっているように感じます。howが大事であることは確かですが、同時に、物事のwhy(どうしてなのか)をじっくりと考え、様々なことにチャレンジしてほしいと思います。解の無いかもしれないwhyを考える場こそ大学であると思っています。

 混迷する時代にあって、「自由で平和な一つの大学」を建学の精神としてきた広島大学には、今まさに、自由で開かれた精神が求められていると確信しています。皆さんとともに広島大学の未来を切り拓いていきたいと願っています。
 
 きょうから始まる皆さんの学生生活が、実り豊かなものになることを心よりお祈りして、私からのお祝いの言葉といたします。

平成30(2018)年4月3日
広島大学長 越智光夫


up