平成30年度 秋季入学式

学長式辞 平成30年秋季入学式 (2018.10.1)

 本日、305人の皆さんを、広島大学の新しい仲間としてお迎えできましたことを、心よりうれしく思います。初めて日本に来て、期待とともに一抹の不安を感じている方がいるかもしれませんが、広島大学は、全力で皆さんをサポートします。
 また、皆さんを支えてこられたご家族、関係者の皆さまにお祝いを申し上げます。

 ここ東広島キャンパスはちょうど今、木々が赤や黄色に色づき、一番美しい季節を迎えています。そして構内の自然のなかで、多くの生き物が命を紡いでいます。日本の国立大学の中で最も自然豊かな大学の一つであると、私は確信しています。「素晴らしい広島大学で学べてよかった」と思っていただけるように、皆さんの大学生活を応援してまいります。

 豪雨、地震、台風など、今年は日本列島や世界を揺るがす大災害が相次いでいます。昨日、日本列島を横切った台風24号、2日前にインドネシアを襲った大地震と津波などは、我々の記憶に新しい限りです。広島大学では、西日本豪雨によって、大学の一部施設の浸水や法面の崩壊などの被害を受けました。ムスリムやベジタリアンの方々への食事の提供、交通アクセスの確保といった課題に対し、大学としてできる限りの取り組みを行いました。今は、通常の大学生活に戻っています。
 災害が発生して数日後、私はある新聞記事を読んで、心を動かされました。当時、東広島市内の道路は土砂崩れなどが起きていて、3キロ以上も車の列ができていたそうです。そんな光景を目にしたら、皆さんはどうするでしょうか。
 広島大学の学生有志15人は、ツイッターでお米の提供を呼び掛け、丸1日以上足止めされたままのドライバーのために自分たちで炊き出したおにぎり300個や飲み物を差し入れて回ったそうです。
 「今、目の前で困っている人のために、何をすれば役に立つか?」それに対する答えは、どんな教科書にも載っていません。
 
 「教養とは、学校で習ったことを忘れてしまった後に残っているものだ」 "Education is what remains after one has forgotten what one has learned in school." という、しんらつな警句で知られるアルバート・アインシュタインは、「教育とは事実を学ぶことではなく、頭で考える訓練をすることだ」"Education is not the learning of facts, but the training of the mind to think." という言葉を残しています。
 私は3年半前、学長就任に当たり、本学の使命として「平和を希求し、チャレンジする国際的教養人」の育成を掲げました。広島大学に入学された皆さんには、専門的な知識のみならず、幅広い教養と本学の理念である「平和を希求する精神」を、ぜひとも身に着けていただきたいと願っています。

 高度情報化とグローバル化によって、世界は大きく変容しています。広島大学は今年4月、12番目の学部となる情報科学部と総合科学部に国際共創学科を開設いたしました。また、来年4月には大学院再編が始まります。
 将来、皆さんの中からきっと世界をリードする人が出てくると信じています。研究や実践を通じて世界を少しでも良くしようという強い意志と、熱い情熱を持っていただきたいと強く願っています。それに応える環境を広島大学は用意しています。輝かしい未来に向かって、一歩を踏み出してください。

 あらためまして、ご入学おめでとうございます。

平成30(2018)年10月1日
広島大学長 越智光夫


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