令和元年度 秋季入学式

学長式辞 令和元年秋季入学式 (2019.10.1)

 本日、324人の皆さんを、広島大学の新しい仲間としてお迎えできましたことを、うれしく思います。また、皆さんを支えてこられたご家族、関係者の皆さまにも、心よりお祝いを申し上げます。

 この季節、いつもなら東広島キャンパスを歩くと、カエデやイチョウ、ケヤキなどの木々が、赤や黄色に美しく色付いています。しかし、秋になっても夏のような日が続き、紅葉も十分とは言えません。間もなくすると、大陸から飛来し構内の池で羽を休める水鳥たちの姿が目を楽しませてくれることでしょう。広島大学は日本の国立大学の中で最も自然に恵まれた大学の一つであると、私は確信しています。

  さて広島大学は、原爆で廃墟となった広島の地に1949年、「自由で平和な一つの大学」を建学の精神として開学した、文字通り「平和の大学」です。私は、学長就任に当たり「平和を希求し、チャレンジする国際的教養人の育成」をミッションに掲げました。昨年からは、平和の大切さを語り継いでいくために、各国政府代表者や在京大使による平和をテーマにした講演会「ピースレクチャーマラソン」をスタートし、これまでにリトアニアの首相やエジプトの高等教育大臣らを招いて学生たちとの対話を重ねています。

 また、広島大学はグローバル大学でもあります。10年後に世界大学ランキング100位以内に入る実力を持つ大学として、文部科学省から選ばれました。英語を用いた授業科目のみで構成する学位プログラムの導入をはじめ、世界から優秀な学生を集めるために最大限の努力をした結果、中国、インドネシア、ベトナムをはじめ、世界各国からの海外留学生は通年で現在約3,000人となりました。私が学長に就任した4年前の1.5倍に増えています。障害のある留学生も受け入れています。

 8月末、横浜で開かれたアフリカ開発会議(TICAD)の会場で、私はエジプトのエルシーシ大統領とお会いする機会を得ました。今回、大統領と面会した日本の学長は、私が唯一であると思います。大統領からは「広島大学とエジプトの大学との相互交流を積極的に支援したい」との言葉を頂きました。現地で開学に向けて準備が進むガララ大学への教員派遣や、エジプトから年間100人程度の学生受け入れを進めてまいります。

 今年から広島大学は大学院改革に着手しました。これまで11あった研究科を4、5研究科程度に再編する画期的な試みです。今年4月に生命科学と医系科学の2研究科を設置したのに続き、人文社会系・学際系と理学・工学系をそれぞれ統合した2研究科を来年設置することが決まりました。従来のたこつぼ化した組織では難しかった、深い専門性とともに幅広い教養と視野を併せ持つ人材の養成を目的としています。

 広島大学に入学された皆さんは将来、グローバル・ステージでアクティブに活躍できるようになってほしいと思います。そのためにも、研究や実践を通じて世界を少しでも良くしようという強い意志と、熱い情熱を持っていただきたいと強く願っています。それに応える環境を広島大学は用意しています。

 今年7月、新研究科の設置記念式典で講演してくださった2018年ノーベル生理学・医学賞受賞者の本庶佑博士は、「有志竟成」を座右の銘とされています。中国の歴史書に由来する言葉で「強い志を持てば目的は必ず達成できる」という意味です。私もこの言葉を皆さんに贈りたいと思います。

 輝かしい未来に向かって、一歩を踏み出してください。「素晴らしい広島大学で学べてよかった」と思っていただけるように、全力で皆さんの大学生活を応援してまいります。

 留学生の皆さんの中には、初めて広島の地に来られて、期待とともに不安を感じている方がおられるかもしれません。広島大学は、皆さんの悩みや不安についてワンストップでサポートする体制がありますので、どんなことでも気軽に相談していただければと思います。

 あらためまして、ご入学おめでとうございます。

令和元(2019)年10月1日
広島大学長 越智光夫


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