令和3年度 秋季入学式

学長式辞 令和3年秋季入学式 (2021.10.1)

 本日、秋深まる広島大学の地に、311人の皆さんをお迎えできましたことを、心よりうれしく思います。依然として新型コロナウイルス感染症の世界的流行が続く中、苦難を乗り越えて本学への入学を果たされた全ての方々に、心よりお祝いの言葉を申し上げます。

 広島県をはじめ各地に出されていた新型コロナ感染症に対する緊急事態宣言は、昨日ようやく全面解除されました。その一方で、冬には第6波の到来も懸念されています。皆さんの中には、授業や学生生活がどうなるのか、また、社会や経済がどうなるのか、不安を抱えておられる方も少なくないのではないかと思います。

今回のコロナ禍は、人類の歴史が感染症との闘いであったことを想起させるとともに、新たな脅威に現代社会がどう向き合っていくのかを問うているように思います。
広島大学は「学びを止めない」を合言葉に、いち早く感染防止と授業の両立に取り組んでまいりました。今年6月からは学生・教職員の希望者を対象にした職域でのワクチン接種を実施し、9月初めに完了しました。2回接種を終えた学生の割合は73%余りと全国の大学の中でも高い値になっています。今後も、皆さんが安全に、安心して学べる環境づくりに努めてまいります。
こうした中で気掛かりなことの一つに、ソーシャルメディアなどを通じてデマや根拠のない情報が拡散する「インフォデミック」があります。たとえば「ワクチンで不妊になる」などといった過った情報が、吟味されることなく個人から個人へ拡散されました。
 古代ギリシャの哲学者ソクラテスの弁論記録であるプラトンの名著『ソクラテスの弁明』にある、次のような一節を思い出します。
「彼は何も知らないのに、何かを知っていると信じており、これに反して私は、何も知りもしないが、知っているとは思っていないかぎりにおいて、あの男よりも智慧の上で少しばかり優っているらしく思われる」
入学式に当たって皆さんにぜひお願いしたいのは、不知を自覚する謙虚な態度を持つことです。それは、知ったかぶりをすることや、教えられたことを鵜呑みにすることと対極に位置するものです。社会には玉石混交のさまざまな情報があふれていますが、常に自らの頭でWHYを考えるセンスを磨いてほしいと思います。
 広島大学は、原爆投下から4年後の1949年に開学しました。それから72年を経て、日本屈指の総合研究大学として発展しています。
 今月末には東広島キャンパスの一角に国際交流拠点施設「広島大学フェニックス国際センター ミライ・クリエ」がオープンし、内外の多様な人々の交流と知識の循環、イノベーション創出の場として学生の皆さんにも活用していただきたいと願っています。
さらに、国立大学初めての外国大学キャンパスとなる、米国アリゾナ州立大学サンダーバードグローバル経営大学院の広島大学グローバル校が設置され、来年8月から学生の受け入れを開始いたします。また、本学初の海外校である広島大学森戸国際高等教育学院北京校も、中国・首都師範大学内に開設いたしました。広島大学の国際化がいっそう進展するものと期待しています。広島大学で存分に学び、ひるむことなく混迷する世界にチャレンジしてください。
広島大学は新たに「次世代研究者挑戦的研究プログラム」に採択され、博士課程後期の学生199人の研究費や生活費を支援することになりました。全ての学生諸君が「広島大学で学んでよかった」と思っていただけるよう、全力で皆さんを応援していくことをお約束します。
 あらためまして、ご入学おめでとうございます。

 

令和3(2021)年10月1日
広島大学長 越智光夫


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