令和4年 年頭挨拶

年頭挨拶 (2022.1.4)

 新年あけましておめでとうございます。2022年、令和4年の年頭に当たり、一言ご挨拶を申し上げます。今年、新型コロナ感染症が収束し、天変地異がなく、地域紛争が収まる安定した世界になり、その上で皆さんとご家族にとって素晴らしい年となりますように、心より祈念いたします。
 
 さて、丸2年に及ぶ新型コロナウイルス感染症の流行は、猛威を振るったデルタ株に続いて新たな変異株、オミクロン株が広島県内をはじめ全国で相次ぎ確認されるなど、予断を許さない状況が続いています。広島大学でもこれまでに学生・職員合わせて121人の感染者が確認されましたが、昨年11月中旬以降は散発的な発生にとどまっています。本学が率先して取り組んできたワクチン接種の効果に加え、学生・教職員の皆さん一人一人の意識と行動のおかげであり、心から感謝いたしております。

 さて、2022年は干支(えと)でいいますと、壬寅(みずのえ・とら)です。古代中国の陰陽五行説によれば、「厳しい冬を乗り越えて芽吹き、新しい成長の礎となる年」を表すとされています。2年後に開学75周年を迎える広島大学にとっても、今年は芽吹きが始まり、大きく育っていく「挑戦と飛躍の年」となるよう、思いを新たに致しておリます。

 今年4月から第4期中期目標期間がスタートします。「第4期中期目標期間における広島大学のあるべき姿」の検討の中で示されていますように、新しい平和科学の理念である「持続可能な発展を導く科学」を実践する、世界トップクラスの教育研究拠点を構築します。さらに、地域社会と国際社会を繋ぐ知的拠点として地方共創の役割を担います。そして、多様性を育む自由で平和な国際社会の実現に貢献する「平和を希求しチャレンジする国際的教養人」の育成という使命を遂行するため、全力を挙げて取り組んでまいることをお誓いいたします。

 そのシンボルとなる施設が昨年10月、東広島キャンパスにオープンした国際交流拠点施設「ミライ クリエ」です。海外から招く研究者や留学生の居住の場として、また学生や地域の方々に開かれたコミュニケーションの場としてにぎわいを見せ、うれしい限りです。
 ミライ クリエの一角では「グローバルキャンパス」と「地方共創」を担う2つのオフィス、「米国アリゾナ州立大学オフィス」と「タウン&ガウン オフィス」が既に始動しています。
 ASUサンダーバードグローバル経営大学院広島大学グローバル校は、いよいよ8月から学生の受け入れを開始します。それに先立ち、4月からは英語で教育を受けるための集中準備コースを開講します。コロナ禍で海外留学が難しい高校生にも世界の有力大学の教育を受ける機会を広島大学は提供したいと考えています。
 地元の東広島市と大学が協働する「タウン&ガウン」の取り組みには、住友商事やソフトバンク、フジタをはじめとする有力企業とのパートナーシップの下、地域課題を解決するイノベーション創出の新たなモデルを発信してまいります。
 国内大学のトップを切って発表した「カーボンニュートラル・スマートキャンパス5.0宣言」は、まさにこうした流れに沿った取り組みと言えます。22年度中に建物の屋上や駐車場に太陽光パネルを設置します。引き続いて、地中熱を利用した空調システムを導入するとともに、自動運転車や第5世代移動通信システムを活用した社会実験も順次進めていく予定です。
 一方、広島市中心部にある東千田キャンパスについては法曹養成を核とした人文社会科学系の拠点に位置付け、法学部と大学院法学・政治学プログラムを移転して23年4月の講義開始を目指します。霞キャンパスは医療人養成拠点としての高度化を一層進めます。3キャンパスの特徴を生かし、大学の使命の一つである地域の活性化を広島大学はけん引してまいる所存です。
 
 未曽有のコロナ禍に立ち向かい、人類は科学的知見を基にさまざまな挑戦を重ねてきました。中でもカタリン・カリコ博士らが革新的技術で開発したメッセンジャーRNAワクチンは、世界を救ったといっても過言ではありません。
 東西冷戦下、ハンガリーから米国に移住したカリコ博士の研究人生は、決して恵まれたものではありませんでしたが、地道に研究を続けた結果、わずか1年という驚異的早さでワクチンの実用化を成し遂げました。
 「難題があれば、どうすれば克服できるか考え、夢を追い続けるのです。そして、自分が取り組んでいることを愛してください」と、博士は述べています。私自身も「夢と情熱」を人生のモットーとして参りました。仕事始めに当たり、博士の言葉をあらためて心に刻みつつ、今年の目標を高くかかげ、チャレンジしたいと思います。

 最後に、教職員、学生の皆さんそしてご家族にとって、健やかで平和な年となりますことを心より祈念いたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

 

 

令和4(2022)年1月4日
広島大学長 越智光夫


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