令和4年度 入学式

学長式辞 令和4年度入学式 (2022.4.3)

 今日の佳(よ)き日、広島大学に入学された3,933人の皆さん、おめでとうございます。
 
 2年余りに及ぶ新型コロナウイルス感染症のパンデミックにめげず、志を貫かれた皆さんに、学長として、また広島大学卒業生の一人として、心から祝意と敬意を表します。
 今回の入学式はなおコロナ禍が終息していない現状を鑑み、入学生の皆さんのみが参加する形での開催となりました。皆さんを支えてこられたご家族にもぜひ出席していただきたかったのですが、見合わさざるを得ませんでした。ご家族はもとより先生、関係者の方々への感謝の気持ちを、これからも持ち続けていただきたいと思います。
 
晴れて広島大学生となられた皆さんに、まず広島大学はどんな大学なのかを、ご紹介したいと思います。
 ステージの正面をご覧ください。国旗と並んで広島大学旗が掲げられています。学章は、生き生きとさわやかな命を示す緑とフェニックスの葉を図案化したものです。フェニックスはエジプト神話に出てくる不死鳥の名前でもあり、「灰の中から新たな生命をもって蘇(よみがえ)る」といわれています。その神話にならい、原爆で廃墟と化した広島の「文化的中核」を目指す本学のシンボルとしたのです。
 広島大学は原爆投下から4年を経た1949年、現在の東千田キャンパスに開学しました。以来、一貫して「平和を希求する大学」を理念に掲げて今日に至っています。新入生の皆さんには必修で「平和科目」を学んでいただきます。戦争や紛争、核問題、貧困、飢餓、地球環境など多様な観点から、平和について考えてほしいと願っています。
第二次世界大戦の惨禍を経験したヨーロッパの地が、21世紀の今日、再び戦場となっている事態を、だれが想像したでしょうか。広島大学はウクライナへの軍事侵攻に抗議する学長メッセージを、全国の大学に先駆けて発出しました。つい先日お会いしたオマーンのモハメッド・アル・ブサイディ大使から「私が広島大学の卒業生なら、平和を希求する大学の一員であることを大変誇りに思うだろう」との言葉をいただきました。平和が脅かされている今こそ、一人一人が平和について考え、行動していくことが求められていると強く思っています。

さて、今日の大学には、3つの大きな役割が期待されています。教育、研究、そして社会貢献です。
教育・研究面において、広島大学は2014年度「スーパーグローバル大学創成支援事業」(トップ型)13大学に選ばれました。また、2018年度に採択された「卓越大学院プログラム」13大学の1つでもあります。ともに中四国の大学では唯一です。
社会貢献については、SDGsの枠組みで社会貢献力を評価する「インパクトランキング2021」が発表されています。広島大学はSDGs17項目のうち5項目で世界100位以内に入りました。国内の大学の中でもトップクラスにランクされています。
東広島キャンパスの敷地内には、米国アリゾナ州立大学の広島大学グローバル校が設置されました。このように、長年にわたって培われてきた歴史と恵まれた環境を持つ広島大学で、大いに誇りを持って学んでいただきたいと思います。
 
 さて、世界は今、コロナ禍や戦争のみならず気候変動、自然災害、貧困、差別など幾多の難題に直面しています。その多くは複雑な要素が絡み合った、解のない問題です。未知の事態に遭遇した時、どのように対処すればいいのでしょうか。 
大学での学びも、単に「正解」を求めることではありません。むしろ、「分からないことは何か」という問いを発することが大切なのです。そして、長い歴史を通じて人類が培ってきた経験や英知に学びながら、自分の頭で考えて、広い視野から解決の道を探ることにあるのです。
 そのカギは「リベラルアーツ」、すなわち「教養」の力にあると、私は考えています。魅力あふれる人になるためにも、専門知識のみならず、幅広い教養が欠かせません。それは、生涯にわたって涵養されていくものだと思います。
How(どのような方法で)だけでなく、物事のwhy(どうしてなのか)をじっくりと考える習慣を育んで、「平和を希求し、チャレンジする国際的教養人」として羽ばたいてほしいと希望しています。

初めにも申しましたように、広島大学は広島文理科大学、広島高等学校、広島高等師範学校、広島工業専門学校、広島医科大学など専門分野や伝統の異なる前身諸学校が一つになって建学されました。その一つ、広島師範学校の源流となった白島学校の開校は、明治維新から10年も経たない1874年にさかのぼります。開学75周年、前史を含めると150周年を2年後に控えたこの時期に、皆さんをお迎えすることができて大変嬉しく思っています。

 コロナ禍が続く中での学生生活に不安を感じるかもしれませんが、希望される皆さんのために3回目のワクチン接種も準備しています。皆さん一人一人が健やかに安心して勉学に励めるよう、教職員一同、全力で支援してまいります。
 終わりに、皆さん一人一人にとって充実した日々となることを心よりお祈りして、私からのお祝いの言葉といたします。

令和4年4月3日
広島大学長 越智光夫


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