令和4年度 秋季入学式

学長式辞 令和4年秋季入学式 (2022.10.1)

 広島大学へ、ようこそ。

 本日、入学された298人の皆さん、おめでとうございます。海外から来られた留学生の方々をはじめ、希望に満ちた皆さんのお顔を間近に拝見して、学長としてたいへんうれしく、また心強く思っております。
 
 世界は今、新型コロナウイルスの相次ぐ変異株出現によるパンデミックの長期化に加え、半年を超えるロシアのウクライナ軍事侵攻という二つの危機に直面しています。国内でもエネルギー・食糧価格の高騰によって経済や人々の暮らしが多大な影響を受けていることは、ご承知の通りです。
 
 こうした事態を目の当たりにして、皆さんがこれからの学生生活に対し期待とともに不安な気持ちを抱くのは、しごく当然のことであると思います。
 
 皆さんがこれから学ぶ広島大学も、幾多の逆境を乗り越えてきました。最大の試練は1945年8月6日の原爆投下です。広島市内にあった前身諸学校、附属学校の多くが焼失・損壊し、学生生徒や教職員が犠牲になりました。その4年後、焦土に開学した広島大学は、先人たちのたゆまぬ努力によって復興を成し遂げ、今日、国内有数の総合研究大学として発展しています。

 ステージ正面の広島大学旗をご覧ください。学章にあしらわれた緑とフェニックスの葉は、清新な生命と再生を象徴しているのです。「平和を希求する精神」は本学のDNAとして脈々と受け継がれ、私も学長に就任して以来、一貫して「平和を希求しチャレンジする国際的教養人の育成」に取り組んでおります。

 今回のウクライナ侵攻に際し、広島大学は直ちに抗議の声を上げるとともに1日も早い平和的解決を訴える学長メッセージを、全国の大学に先駆けて発出しました。また、ウクライナの大学生受け入れも開始しました。ウクライナにとどまらず、人道危機の続くアフガニスタンから日本への退避を望む元留学生に対しても、家族を含め74人を受け入れる国内最大級の支援に取り組んでいます。

 17世紀オランダの哲学者スピノザは「平和とは戦争がないことではなく、美徳であり、心の安定であり、他者愛、信頼、正義を求める気持ちである」と述べています。「正義」以外に関しては、その様に思います。というのも、それぞれの個人、集団での「正義」があるからです。自由で平和な国際社会を実現し、人類の幸福に貢献するという広島大学の使命を、これからも一歩一歩果たしてまいりたいと考えておリます。

 さて、ここ東広島キャンパスに、新しい国際交流拠点施設「広島大学フェニックス国際センター ミライ・クリエ」がオープンして1年になります。いつも大勢の学生さんでにぎわっているようです。ぜひ皆さんも気軽に立ち寄って、交流やイノベーション創出の場として活用していただければ幸いです。また、近くには国立大学として初めて誘致した米国アリゾナ州立大学サンダーバードグローバル経営大学院の広島大学グローバル校が開校し、授業が始まっています。名実ともにグローバルな環境の下で、思う存分学んでください。

 学生の皆さんが持てる力を最大限に引き出すことができるように、大学としても様々なステージを用意しています。しかし、そのドアを開けるのは皆さん一人一人です。HOWとともにWHYを考えながら、ぜひとも新たなステージに挑戦してほしいと思います。もちろん大学としても、皆さんに「広島大学で学んでよかった」と思っていただけるよう、教職員一丸となってサポートしていくことをお約束します。

 広島大学は、大学の社会貢献力を示す「THEインパクトランキング2022」においてSDGs17項目中の5項目でトップ100に入るなど、カーボン・ニュートラルをはじめ地域から地球規模に至る社会課題の解決にも取り組む世界水準の大学です。2年後に迎える開学75年、創立前史75年を含めると150年の節目に向かって、共に胸を張って前に進んでいきましょう。

 あらためまして、本日はご入学おめでとうございます。

 

 

令和4(2022)年10月1日
広島大学長 越智光夫


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