広島大学原爆死没者追悼式 追悼の辞 (2023.8.6)
今年も「原爆の日」が巡ってまいりました。「広島大学原爆死没者追悼式」を挙行するにあたり、広島大学を代表して、原爆の犠牲となられた方々の御霊(みたま)に謹んで哀悼の誠(まこと)をささげます。
新型コロナウイルス感染症は、5月から感染症法上の位置付けが、結核などの「2類相当」から、インフルエンザなどと同じ「5類」へ移行しましたが、いまだ完全には終息しておりません。また、今年の夏は例年になく暑く、熱中症なども懸念されるため、ご遺族や関係者の皆様の健康と安全に十分配慮した形で開催させていただきました。
先ほど「広島大学原爆死没者追悼之碑」に、この1年間に確認された20人のお名前を書き加え、合わせて2,080人の方々の名簿を奉納させていただきました。
78年前のあの日、本学の源流である広島文理科大学をはじめ、9つの前身諸学校の多くが損壊や全焼の被害を受けました。学生・生徒・児童や教職員の皆さんも、校舎内や勤労動員先などでかけがえのない命を奪われ、また、傷つかれました。その中には、中国やモンゴルなどからの留学生や、マレーシアやインドネシアなど、東南アジアからの南方特別留学生がおられます。
2024年に、新制広島大学の開学から75周年を迎えるにあたり、今回、改めて被爆留学生について関係者や資料をあたったところ、17人の消息が確認できました。このうち、本学の原爆死没者名簿に登載されていなかった中国からの留学生2人、東南アジアの南方特別留学生6人のお名前を、日本の本学関係者12人とともに名簿に書き加え、奉納させていただきました。
さらに、本来なら、ご遺族による登載の申し出が必要とされる広島市の原爆死没者名簿についても、本学がご遺族に代わり、登載を広島市に申し出、受理されました。こういった取り組みは今回、初めてとなります。
5月に開かれたG7広島サミットでは、核保有国を含む各国首脳が被爆地を訪れ、核兵器の恐ろしさや悲惨さを肌で感じてもらえたと思っています。被爆地初のサミット開催に合わせて、本学では核兵器のない世界を目指すシンポジウムや広島G7ユースサミットなどの関連行事を支援・実施して参りました。次世代を担う学生らが、改めて平和について考え、行動を起こす良い契機になったものと実感しております。
これからも、平和のために何ができるか考え続け、自由で平和な国際社会の実現と、人類の幸福への貢献に引き続き積極的に取り組んでまいります。100年後にも広島大学は「平和を希求する大学」の使命を担い続けていくことを、今ここに改めてお誓い申し上げ、追悼の辞といたします。
令和5年(2023年)8月6日
広島大学長 越智光夫