高度救命救急センター(ICU,ECU)・ハイケアユニット

 「Less is more、そして単なる救命のみではなく」

 広島大学病院救急集中治療科は、広島県で唯一の「高度救命救急センター」として、急な病気やケガで生命の危機に瀕した最重症の患者さん(三次救急)を24時間体制で受け入れて治療しています。

 救急搬送された患者さんは、まず救急初療室(ER)で初期評価と安定化を受けた後、症状に応じて集中治療室(intensive care unit: ICU・10床)、救急治療室(emergency care unit: ECU・12床)あるいは高度治療室(high care unit: HCU・10床)に移動し、集中的な治療が行われます。ICUとHCUでは、病院内で急変した患者さんも受け入れており、発症後14日間ないし21日間にわたる急性期治療に特化した高度かつ集中的な治療とケアを提供しています。

 当センターでは、交通事故や災害による重症外傷、重症熱傷、急性中毒、指肢切断などの外因性疾患から、急性呼吸不全、敗血症、脳卒中、急性心筋梗塞といった内因性疾患に至るまで、あらゆる最重症病態に対応しています。年間の救急入室件数は1,500件を超え、地域の最後の砦としての役割を果たしています。

 私たちの医療は、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、臨床工学技士、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー、救急救命士、言語聴覚士、医療メディエーターなどの多職種の専門家がチーム一丸となって対応し、複雑かつ重篤な患者さんの救命と機能回復・社会復帰を目指しています。

 当センターの特筆すべき特徴として、以下の3点が挙げられます:

  1. V-V ECMO(体外式膜型人工肺)治療の中核施設:
    新型コロナウイルス感染症流行時に問題となった、通常の人工呼吸では治療困難な最重症呼吸不全患者さんに対し、広島県内で唯一のV-V ECMO基幹施設として高度呼吸管理を実施
  2. 四肢外傷再建学講座との連携による外傷診療の強化:
    外傷診療に特化した四肢外傷再建学講座との協働により、重症外傷や指肢切断患者さんを集約化し、迅速な手術対応と一貫した周術期管理を実現
  3. 小児重症救急への対応:
    年間100例を超える小児の重症救急患者さんに対し、小児科と密接に連携しながら高水準の集約的治療を提供

 私たちは、「世界標準の根拠(エビデンス)に基づいた、患者さんに負担の少ないシンプルかつ効果的な治療」を基本方針としています。くすりや検査、機器の装着が多ければいいものではなく、可及的に患者さんに負担の少ない最小限の介入で最善の医療を届けることを目指しています(Less is more アプローチ)。また、治療やケアの目標を、単なる救命のみではなく、良好な機能回復と社会復帰におき、より良い急性期医療の提供につとめています。


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