整形外科では、既存の治療法の問題点を改善し、より良い治療成績を得るために未来を見据えた研究を行っており、臨床応用に向けて動いています。また、新たな治療法の開発に向けたシーズを探索すべく基礎研究を行っています。
新規素材を用いた半月板再生
半月板が断裂すると、縫合術か部分切除術が行われていますが、縫合できる症例は多くはなく、部分切除術が行われることが多いのが現状です。このため変形性膝関節症に移行する症例も多くみられます。変形性膝関節症は有症者が1,000万人といわれ、健康寿命の阻害要因にもなっています。当院整形外科と三洋化成工業株式会社が機能性タンパク質「シルクエラスチン」を用いた新たな半月板の再生医療の実現化を目指します。シルクエラスチンをゲル状にして半月板断裂部に留置する治療法、スポンジ状にして半月板組織と合わせて縫合・移植する治療法の開発・治験を勧めます。この研究は「半月板損傷根治を目指す革新的治療技術の創生研究」として国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「産学連携医療イノベーション創出プログラム基本スキーム(ACT-M)」に採択されました。
広範囲軟骨欠損に対する一期的軟骨再生
広範囲軟骨欠損に対して、現在、自家培養軟骨細胞移植術が行われています。これは、正常の軟骨組織を少量採取して、軟骨細胞を単離し、4週間培養して細胞を増やした後に、軟骨欠損部に移植するという治療法です。しかしこの方法は、培養期間が必要で、2段階手術になり、患者さんへの負担が大きくなります。そこで、当院では培養を必要としない広範囲軟骨欠損に対する軟骨移植術を目指しています。具体的には、正常軟骨を少量採取して細かく砕き、これを軟骨欠損部に移植する方法です。すでに動物実験では、従来の方法と比較しても良好な治療成績を得ています。現在、医師主導臨床試験を行うための準備を行っています。
変形性関節症や運動器修復機構の解明
予防や進行抑制法が確立されていない変形性関節症や運動器損傷に対して外科的な治療法以外の治療法の開発に向けてマウスや細胞レベルの基礎研究を行っています。