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【研究紹介】子どもの意思を尊重し最適な環境を考える

 石垣 文 助教

児童福祉の現場と設計のプロをつなぐ

 さまざまな理由で子どもたちが家族と離れて暮らす、児童養護施設や児童相談所の一時保護所。私はそれらを主な研究対象として、施設の空間が子どもの生活に及ぼす影響を観察し、新しい施設の建築に応用しています。最近では、ある一時保護所の建設に携わりました。施設の多くは、子どもの数に対して個室が足りないなど最低限の安定した生活が保障されにくいという現実があります。そのため、複数の個室や学習室、食堂などを備えた新しい建物を新築。幅広い年齢の子どもたちが安心して暮らせる施設とするための支援をしました。
 行政や社会福祉法人などの施主は、施設の改善案を持っているものの、多くの場合それをうまく言語化できません。一方、設計者は児童福祉の現場に詳しくないため、私が両者の仲介役としてアドバイスを行います。子どもたちの生活を守るため、施設の全国的な状況を捉える研究も進めています。将来的には、建築のガイドライン策定を実現することが目標です。

計画に携わった施設の図

空間の工夫次第で想いを伝えられる

 施設の空間を考える際に大切にしているのは、子どもの視点。見守りやすい死角のない空間を、監視されているような窮屈な空間だと感じる子もいます。元々他人同士である子たちが共同生活を送るには、個室やサブリビングなどを作り、一人でいる時間やみんなといる時間を自ら選べるようにすることが必要なのです。子どもの意思を尊重した環境づくりは、一般家庭にも応用できます。本人の希望に合わせて家具を配置したり、作品や写真を飾ったりすると、自らが尊重されていることを実感し、自己肯定感が上がると言われています。空間の工夫次第で想いが伝えられることを、多くの家庭で意識してもらえたらと思います。
 これからは、施設利用者の主体的な空間づくりを支援していきたいと考えています。近年、技術の進化やSNSの普及などによって、自ら過ごしやすい環境をつくる動きが盛んになっています。ある施設では、当たり前だと思っていた家具の配置を変えることで、ゆったりとした相談の場を設けられたという例も。職員の方々をサポートしながら、より良い施設づくりに取り組んでいきたいです。

広島大学研究者ガイドブック (石垣 文 助教)

PROFILE いしがき あや

  • 大学院先進理工系科学研究科建築プログラム所属。
  • 施設計画や地域施設計画を専門としており、児童養護施設やこども園、障害者施設など幅広い施設の計画に携わっている。
広島大学広報誌『HU-plus』 Vol.21(2023年5月号) もったいなれっじ(p11-12)

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【この記事に関するお問い合わせ先】

広島大学広報室

Email: koho*office. hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に変換して送信してください)


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