第154回学位記(博士)授与式

学長告辞(第154回学位記(博士)授与式) 2010.1.19

志を高く

本日、広島大学より19名の方に学位を授与させていただきました。誠におめでとうございます。学位を取得されるまでに積み重ねてこられました多大な努力に対して心から敬意をささげるものです。

2009年は、世界的に続く金融不安に加えて、我が国では50年以上続いた自民党政権が退き、新たに民主党が政権を担う政権交代がなされた年でした。そして、科学技術の急速な進歩により、社会はますます複雑化しているように思います。

資源の少ない我が国を支えている社会基盤は科学技術であり、その科学技術に関する多くの業績が、21世紀知識基盤社会の中核をなす高等教育機関である大学でなされていることも事実です。この度の皆さんの優れた業績がこれからの科学研究発展の大きな礎になりますことを確信しております。

21世紀知識基盤社会の真に意味するところは、これまで人類が育んできた「知」を活用して、一人一人のそれぞれの立場が尊重され、また、お互いに支え合うことで、健康で充実した心豊かな生活を営むことが出来る社会の実現であろうと思います。勿論、希望に溢れる社会であることが望まれます。そのためには大学で学んだ皆さん一人一人が志を高く持ち、国際社会や地域社会のリーダーとして、また組織や社会を支える気概を持つスタッフとして、それぞれに与えられた役割を果たす事が望まれます。

20世紀終盤の人類社会は、食料・エネルギー問題に直面し、環境破壊・汚染、テロなどの新しい課題を生み、偏差値やものの豊かさが人間の価値を決めるような歪な価値観を生みました。21世紀は、私たちがこれらの課題解決に向けて取り組み、豊かな人間関係が構築され、「心の豊かさ」が尊重される21世紀に相応しい新しい価値観を皆で共有する社会が実現するよう努め、そのことに私ども一人一人が貢献していかなくてはならないと思います。

広島大学で高いレベルの学術研究を成し遂げ、学ばれた皆さんが、人間としても一層成長され、地域社会や国際社会で重要な役割を果たされ、希望に満ちた未来社会の構築に貢献されますことを心から祈念してお祝いの言葉といたします。

本日は誠におめでとうございます。

平成22年1月19日
広島大学長 浅原 利正


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