第18回 国際協力研究科 D3 谷口 京子さん

写真:谷口京子さん

取材日 2014年10月27日

第18回研究室訪問は、広島大学大学院国際協力研究科 教育文化専攻教育開発コースの博士課程後期(D)3年、谷口京子(たにぐち きょうこ)さんが取材に応じてくれました。青年海外協力隊がきっかけでアフリカのマラウイ共和国の初等教育に関する研究をされている谷口さんに研究のやりがい等をお聞きしました。

現在の研究内容はどのようなものですか?

マラウイ共和国の初等教育に関して研究をしています。マラウイはアフリカの中でも、ワースト5には入るほどの貧しい国です。そのため、マラウイ国内の教育制度は、ほとんど他国からの援助によって保たれています。ただ、援助も限られた側面しかできていません。世界中の子どもたちが義務教育を受けられるような取り組みがされているため、小学校の数は十分にあります。しかし、地域によっては子ども100人に対して、教師が1人しかいないという場所があります。また、マラウイでも小学校への入学率はほぼ100 % ですが、卒業する子どもとなると半分ほどしかいません。さらに中学校に進学するのは全体の20 %ほどしかおらず、大学となると1 % いるかどうかになってしまいます。そのような状況で、私は1年に1度2ヶ月、現地でフィールド調査を行い、そこから得られたデータより研究を行っています。
日本では、学校に行けることは当たり前であるため、中には行きたくないという子もいます。一方で、マラウイの子どもたちは、学校に行けること自体をとても楽しんでいます。中には、経済的な問題でノートやペンを持っていなくても、学校に行っている子がいます。そういった状況を見ていると、勉強をしたいという子どもたちの気持ちが伝わってきます。その子たちのためにもフィールド調査によって得られたデータを元に、マラウイの実態を統計的手法より示していきたいです。数理による客観的指標で国に実態を示すことは、国際社会や現地の人を納得させやすく、援助や国の発展にとってとても重要です。研究によっては、マラウイの良い面ばかりではなく、悪い面も見つかってしまうと思います。それらの研究成果を、どうすればマラウイの発展に活かしていけるかを考えていきたいです。

研究を始めたきっかけは?

青年海外協力隊で偶然マラウイ共和国に2年間ボランティア活動に行って、熱心に勉強に取り組むマラウイの子どもたちと接したことがきっかけでした。学校に来ることが楽しい、勉強したい気持ちを持った輝いた目をしている子どもたちに実際に触れて、勉強の素晴らしさや勉強ができるという日本の環境がどれだけ恵まれているのかを知ることができました。そこで、自分も改めて勉強をすることで現地に行った自分だからこそできる研究を通した、マラウイへの援助をしていきたいと思いました。また、国際分野で働こうとすると、最低でも修士号が必要であったことも関連しています。

写真:現地の子供たちと谷口さん、後方左から5人目

D進学の決め手は?

修士に入学し初めて研究をしてみて、とても面白いと感じました。もっと専門的に、プロとして研究をしたいと思うようになったため、D進学を決めました。

先生の指導方針や研究室の特色は? 

学生への指導を積極的にしてくださる方です。自分の研究室に籠りっぱなしの先生が多いと思うのですが、学生への指導にかなりの時間を割いてくださります。先生の専門は、学校の経営に関することで、今はカンボジアでのドロップアウトの研究をされています。ここの研究室では色々な国を研究対象にしている人がいますが、研究方法はどこの国にも応用できます。
ゼミは毎週1度行われています。広島大学の国際協力研究科は修士からしか入学できず、学部がありません。学部から持ち上がりで修士に進学ということがなく、外部から進学してくる人がほとんどです。そのせいか、研究室内の学生の年齢や経歴、国籍がバラバラで、みんな様々な背景を持っています。色々な人がいるため、とても楽しい環境だと思っています。

修了後の進路はどのような方面にされる方が多いですか?

研究室に進学してくる人の経歴はバラバラですので、それに応じて就職後の進路も幅広いです。修士については、企業に行く人もいれば国際協力に関する仕事に就く人もいます。ドクターについては、研究職に就く人が多いという印象があります。

研究のやりがいは

未知の世界を調べられることです。私は学部卒業後、ソーシャルワーカーとして、援助に関する仕事をしていました。そこでは決められたプラン通りの業務をこなしていかなければならず、結果はある程度予測することができました。それに対し、研究では決められたプランというものが無く、自分で目標を定めることができます。自分の行動が正しいか分からず、結果がでる保証もありません。しかしながら、未知の世界を自分の手で調べることができます。誰も知らないことを最初に発見できるほどの喜びは無いと思っています。

今後のご自身の展望は?

研究者として、これからも現地と関わりながら研究をしていきたいと思っています。特に、海外の大学院や研究機関で研究を続けることを目指しています。統計分析の手法は、日々新しくなっています。しかし、その統計分析を途上国の研究に応用した例は少ないです。そういった統計分析を用いて、途上国の実態を示すことができるような研究機関に進むことができたらと思っています。

写真:谷口京子さん

取材者:杉江 健太 (総合科学研究科総合科学専攻 人間行動研究領域 博士課程前期2年)


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