第7回 先端物質科学研究科 D3 久保田 光さん

写真:久保田さん

広島大学大学院 先端物質科学研究科 量子物質科学専攻 (小島研究室)

取材実施日:2013年3月6日

第7回研究室訪問は、水素貯蔵物質研究室の博士課程後期(D)3年、久保田光さんが取材に応じてくれました。研究を始めたきっかけや研究室の特色、研究のやりがい等色々とお伺いしました。

Q:研究内容はどのようなものですか?

水素貯蔵材料を実際に使えるようにするための基礎研究を行っています。
現在ガソリンに変わるエネルギーとして水素が注目されていますが、水素を貯蔵する水素吸蔵合金は重たい元素で作られているため、車に積む時に重たいという問題があります。
そこで、私たちの研究室では軽元素、例えば3番目のリチウムや11番目のナトリウムのような原子番号の若い元素を研究しています。その中でも私は6番目の炭素を使った水素貯蔵材料について研究をしています。
炭素に注目した理由はもちろん軽いという特徴もあるのですが、資源的に豊富であるという点もあります。
水素貯蔵を研究する際には、温度がひとつのキーワードとなります。吸着現象を利用した水素の貯蔵形態には、大きく分けて二種類あります。
一つ目は化学吸着です。例えば水素が金属と反応して、水素と金属の化合物が生成します。この状態では、水素が生成物の一部として貯蔵されている状態です。二つ目は物理吸着です。これは、ある物質の表面上に水素がくっついている状態です。水素は物質と反応をせず、水素の状態で貯蔵されています。
私が研究しているのは後者の物理吸着で、水素が低温領域でどのように炭素に吸着しているのかを研究しています。具体的には、水素が1気圧で液化する温度20 K (-253 ℃)で液化した水素がどのように炭素に吸着しているかについて研究をしています。

Q:研究を始めたきっかけは?

高校時代から化学に興味がありました。
炭素といっても様々な種類があり、構造が違うだけで特性が異なるという点が面白いと思いました。大学の学部は広島大学の工学部3類で応用化学コースに所属していました。学部1年の時の教養ゼミで、当時も話題になっていた燃料電池に関する授業で水素について学び、水素や地球にやさしいエコになるようなことを将来したいと思っていました。
学部4年の時に今の指導教官である小島先生が水素に関して講義をされた際に、水素の研究について興味を持ちました。そこで、先生とお話をしてから、高校の時に興味を持っていた炭素を利用した水素に関する研究を通して、地球のためになるようなことがしたいという自分の思いがさらに強まり、現在の研究室に行くことを決めました。

写真:久保田さん

Q:研究室の特色や先生の指導方針はどのような感じですか?

私の所属している研究室の特色は、自由に研究に取り組めることです。
「修士以上の学生は年齢的に社会人だから自分たちで自主的に動けるように」と、学生として、そして一人の研究者として研究を行うことが可能です。自由である分、先生から何か指示を受けるのではなく、自分たちで動く必要があります。研究室のみんなも自覚を持って研究に取り組んでいます。
また、自身の研究が進めやすい点が良いところだと思います。研究に関して何か相談したいことがあれば、いつでも先生等と議論ができ、オープンで対等な関係で議論をしてくださり、学生にとって研究をしやすい環境だと思います。

Q:研究環境はいかがですか?

研究対象として、酸化されやすい物質を取り扱っています。
そのため、試料の作製から測定まで、空気非接触で行うことができ、実験をするための環境は充実していると思います。
また、学内での研究はもちろん、研究会や学会に参加し、積極的に学外の活動も行っています。そして、研究に没頭するだけでなく、実際に水素を使うことで、どんなことに役立つのか、どのように利用できるのか、実体験してもらうこともしています。

写真 久保田さん

Q:就職はどのような方面にされる方が多いですか?

博士課程後期の修了生は大学などの学術機関で研究を続ける方が多いです。日本だけではなく、海外でも活躍されています。
また、博士課程前期の修了生は企業に就職して、研究や技術系の仕事に就く場合が多いです。

Q:研究のやりがいは?

私が研究に対して1番面白いなって思うところは、自分が新たな発見をする最初の人物になることです。ただし新しい発見を説明することは、容易ではありません。
新しい問題に直面した時に、どのように解決していくのか、その問題解決方法は無限にあって、それを自分で決めて解決できるという点も研究の楽しいところだと思います。
 

写真:久保田さん

Q:自身の今後の展望は?

再生利用可能エネルギーとして、現在は太陽光などが身近な存在としてあると思いますが、今あまり注目されていない再生可能エネルギーも色々あります。そこで自分が担い手と活躍していきたいと思っています。

取材者:市川 壮太(国際協力研究科 開発科学専攻平和共生コース 博士課程前期2年)


up