第6回 工学研究科 D3 板倉 正也 さん

写真:板倉さん

広島大学大学院 工学研究科 環境触媒化学研究室 (佐野研究室)

取材実施日:2013年2月27日

第6回研究室訪問は、環境触媒化学研究室の博士課程後期(D)3年、板倉正也さんが取材に応じてくれました。今回も研究を始めたきっかけや研究室の特色、研究のやりがい等色々と伺ってきました。

Q:現在の研究内容はどのようなものですか?

ゼオライトの合成を研究しています。ゼオライトとは主にケイ素やアルミニウムの酸化物から構成される構造上に「孔(あな)」がある物質のことをいいます。この「孔」の大きさによって、水だけを通す膜などを作ることができます。
私の研究では、一般的なケイ素とアルミニウムを混ぜて作る方法での合成ではなく、ゼオライトを原料として新たなゼオライトを作っています。その特徴として、ケイ素とアルミニウムを混ぜて作る一般的なゼオライトの合成法に比べて速く出来たり、酸に強いなどの利点があります。
私の研究で出来たゼオライトは酢酸と水を分ける膜の材料として高い性能を持っており、これが実用化されていけば酢酸と水を蒸留することなく分けることが出来るようになります。もしそうなれば、蒸留するための燃料を抑えたりと環境問題にも貢献できると思います。

Q:研究を始めたきっかけは?

もともと、米子高専の物質工学科にいまして、広島大学の3年に編入という形で入学してきました。編入時から、Mへの進学までは考えていたのですが、M在籍中に研究が面白く、続けたいと思いDへの進学を決めました。
研究テーマであるゼオライトの合成に関しては、学部3年のときの授業で興味を持ち始めました。環境触媒化学研究室に決めたきっかけは、もちろんテーマであるゼオライトの合成に興味があったこともあるのですが、先輩の卒業論文発表でのプレゼンを聞いた時に、そのプレゼン能力の高さを見て、この研究室なら研究以外の部分もしっかりと学べると思ったからです。
 

写真:板倉さん

 Q:研究室の特色や研究環境はどのような感じですか?

触媒に限らず環境やエネルギー分野に貢献できる無機材料を作るというのが環境触媒化学研究室ですが、研究テーマは大きく3つに分かれています。なので、ゼミでは他の分野の方々から意見を聞け、いつも刺激的です。ゼミは学部生からDの学生まで全員が参加するので、20人くらいになります。火曜日に行われるゼミでの研究報告は10人ずつ行い、2週間に一回自分の研究の進捗報告をしてアドバイスをもらうといった形で進めています。その他、土曜日には論文紹介のゼミがあり、それぞれが調べてきた論文を発表します。ここでは他分野の発表などもあり非常に勉強になっています。また、研究室内ではそれぞれが自身の研究の第一人者というスタンスなので、学部生もDの学生も関係なく意見を出し合います。
研究環境は機材に関しても資金に関しても非常に恵まれていると思います。また、先生が以前国の研究機関(現在の産業技術総合研究所)に勤めていられたこともあり、大学内の設備だけでは難しい実験に関しても相談できるというのも大きな強みであると思います。

写真:板倉さん

Q:先生の指導方針はどのようなものですか?

先生は自主性を重んじてくれるので、自由度が高いです。2週に1回まわってくるゼミで進捗状況を報告して、先生からアドバイスを頂いています。先生がある程度自主性に任せてくれるというこの環境があったからこそ、よりやりがいを感じ、Dへの進学を決めたという部分もあります。

Q:就職はどのような方面にされる方が多いのですか?

多くの学生はM卒業時に化学メーカーに就職します。Dの学生は国の研究機関にいくこともあります。私も今年の4月からは民間企業への就職が決まっていて、今後は今までの研究に加え実用化という方向で研究を進められたらいいなと思っています。

写真:板倉さん

Q:研究のやりがいは?

研究のやりがいは合成して今までに無かったものが作れるということです。実験して、新しい結果が出た時の喜びは非常に大きいですね。
そして、自身の研究成果が人の役に立つように実用化されていくというのは本当に楽しみですし、自分自身でも実用化に向けた研究を続けていきたいと思います。

取材者:須藤 絢 (国際協力研究科 教育・文化専攻 教育開発コース 博士課程前期2年)


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