第1回 工学研究科 D3 平野 陽豊さん

写真:平野先生

広島大学大学院工学研究科システムサイバネティクス専攻 生体システム論研究室訪問(辻研究室)

取材実施日:2012年12月3日

今回から始まりました研究室訪問。第1回目は工学研究科生体システム論研究室にお伺いし、博士課程後期(D)3年の平野陽豊さんが取材に応じて下さいました。
それでは、なぜドクターに進学をされたのか?研究を始めたきっかけは?研究室の環境は?などなど色々と伺ってみたいと思います。

Q:研究を始めたきっかけは何でしたか?

学部時代の卒業研究がきっかけです。卒業研究で生体システム論研究室を選んだ理由は、学部2年の時に体調を崩して病院に行った際、偶然に辻先生を見かけ話しかけたことだと思います。その当時先生の講義もとっていて楽しい講義だと思っていました。もともと生体システム論研究室に興味は持っていたのですが,この病院で話しかけたことが先生の研究室へ入る決定打になりました。

Q:D進学の決め手は?

最初からDに行こうと思っていたわけではなく、Dへの進学を考えたのは博士課程前期(M)2年の直前でした。当時は、D進学と就職のどちらでも行けるように準備していて、結果的にDへ進学することになりました。

Q:研究内容はどのようなものですか?

生体システム論研究室全体の研究コンセプトは、人が機械の使い方を学習していくのではなく、機械が人を学んで人にとって使いやすい形に変わっていくという,人と機械が共創するシステムを作ることです。
研究室は、生体運動解析、人工 生命体、生体信号解析、ソフトコンピューティング、メディカル・エンジニアリングの各グループに分かれています。その中で、生体運動解析では、人の筋肉や 神経はどのような特性があるのか?ということを実験や解析等で明らかにし、生体信号解析では、生体運動解析で得られた理論をもとに、人にとって使いやすい機械を実現するための研究を行なっています。
例えば、人の皮膚の表面に流れている筋電信号をキャッチしてアームの先端を動かす義手の研究などです。私はメディカル・エンジニアリンググループに属していて、人の特性を診断に応用するためにはどのようにすればいいのかを研究しています。
私の博士論文では動脈硬化を診断へ応用するために、血管力学特性を出来るだけ詳しく評価する方法と患者さ んに不快感や苦痛がないように血管特性を計測する方法の研究をしています。

写真:平野先生

Q:研究室の特色や環境はどのような感じですか?

生体システム論研究室は工学研究科でも1,2を争うほど人が多い研究室で、各グループに所属するDがある程度グループに所属する後輩の研究を補佐しています。ゼミでは先生に進捗を報告してアドバイスを頂くのですが、Dの学生が後輩の指導に当たることも多くあります。
Dになった今は色々とやることも増えましたが、その分自分で決められることも多くなりました。基本的に研究室は自由な雰囲気ですが、研究室は社会人になる前の訓練の場という意味と普段からある程度研究を進めて欲しいという意味から、平日は研究室へ来るというルールだけは定めています。
研究室環境を機材等の面からみると、非常に恵まれていると思います。必要な機材や機器は必要に応じて揃えて頂いていますし、先生には本当に感謝しています。また、私のグループは医療機器メーカーと共同研究をしているので、医療機器などを必要に応じてお借りしたりもしています。

写真:平野先生

Q:就職はどのような方面にされる方が多いのですか?

研究室には、学部、修士、博士の学生がいますが、学部生はその8~9割が進学をしていて、就職する学部生は毎年0~1名です。一方、修士の学生は基本的には就職し,就職先はメーカーが多いと思います。博士の学生の最近の傾向は、日本学術振興会特別研究員(注1)からポストドクター(注2)(PD)、大学教員へが多いです。
 

Q:つい先日までインターンシップに行かれていたとお伺いしましたが、それを踏まえてこれからの展望をどのように考えていますか?

インターンシップは3か月行かせて頂いたのですが、会社とは何ぞやということを色々考えさせられるいい経験となりました。受け入れ先の会社の方が良い方々で、こういう環境の下で働きたいと思いました。インターンシップの内容は、試作された血圧計の部品を評価するためのシステムを作ることでした。なので、自身の研究と直結していたわけではなかったのですが、課題を設定し、それを解決していくスタンスと、グループで課題解決案をディスカッションするということは今の研究室と良く似た環境でした。今回インターンシップに行って、自分自身が今行っている研究スタンスは決して間違いでなかったことが分かったことは非常に大きな収穫でした。
今後の展望はまだ具体的に決めているわけではありませんが、大学に残るにしろ民間企業へ就職するにしろ、医療機器から離れることはないと思います。また、今回のインターンシップでも実感したのですが、給料面よりも人間関係が良い所で働きたいと思いました。

写真:平野先生

(注1) 日本学術振興会特別研究員: http://www.jsps.go.jp/j-pd/index.html
(注2) ポストドクター: 博士号(ドクター)取得後に任期制の職に就いている研究者や、そのポスト自体を指す語

取材者:須藤 絢 (国際協力研究科 博士課程前期2年)


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