第24回 理学研究科 D3 福井 敬祐さん

写真 福井さん

取材日 2015年2月9日

第24回研究室訪問は、理学研究科 数学専攻 確率統計講座の博士課程後期(D)3年の 福井 敬祐(ふくい けいすけ)さんが取材に応じてくれました。統計学を通じていろいろな分野でのデータ解析を担う福井さんは一度社会に出てからDに進学 されました。Dに進もうと思ったきっかけや研究のやりがいについてお聞きしました。

研究を始めたきっかけは?

皆さんも高校まで必須科目として数学を勉強されたと思います。好きだった方も嫌いだった方もいらっしゃると思いますが大学に入って数学の授業を受けた時に私が感じたことは「なんだこれ!!」 の一言でした。今までの高校数学とは全く異なる理論要素が強い数学の講義に、私は正直あまり興味を抱けないでいました。そんな中「統計学」の授業では実際 のデータを元に社会に還元していける実例をもとにした授業であり、数学の力を応用して社会に活かすという面で非常に興味を持ちました。この授業を受けたこ とで今までの漠然とした数学への興味が「統計学」の研究への興味になったと思います。

研究内容はどのようなものですか?

数学研究科は理論要素を非常に重要視した研究をしています。統計学をする上で重要となるのがデータのモデルを選抜していく作業とモデルの良さを評価するための指標となる「情報量基準」という物です。この情報量規準によってデータの論理的な裏付けがされます。現在、世界的によく使われている情報量規準は2つありますが、多くのことで電子化が進みデータの形式の多様化、量や質の違いによってこれだけでは網羅できない可能性のあるデータが増えてきました。昨今、皆さんも「ビッグデータ」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか?ビッグデータとは巨大で複雑なデータの集積物のことを示しています。私がDで行った研究の1つとしてこのビッグデータを解析するにあたって今までの情報量規準で起こる弊害を探索することとビッグデータに適した情報量規準の作成の手がかりを探すということでした。
それとは別に取り組んでいたのが統計学の応用です。広島大学では統計の窓口を設けていて一般企業や他の分野の研究室から統計に関する依頼がくるようになっています。私もいくつかのプロジェクトに参加させていただき、応用分野での統計学のすばらしさを実感しました。例えばある病気にかかった人々のデータからその病気になるリスクの高い人をピックアップしてその病気を予防するプログラムを受講してもらうように進めるプロジェクトなどです。このように実社会の役にたつ数学の力を目の当たりにしたときに非常に研究に対してやりがいを感じます。

一度社会に出られた後になぜDに進もうと思ったんですか?

銀行に入社させてもらって1年足らずでDに進む決心をして仕事を辞めたんですが、仕事が辛いとか嫌だということは全くなかったです。入社して感じたのが銀行が扱うデータの量が非常に複雑で多いということとこうした処理にあまり数学の力が生きていないということです。私が大学で学んだ統計学をする人がいないし、統計学を利用すること自体がスタンダードの形から外れているんです。そのときに漠然と、今後は社会がどんどんデータ化されていくのだから、統計学をいろいろな事象 のデータ応用を行う要にしていきたいと思いました。また、銀行で働かせてもらったことで、少しだけ経済の流れを見ることが出来ました。そのことでより一層 大きなデータを簡便に応用できるようにするために統計学をもう一度学びたいと思いました。

写真 福井さん

先生の指導方針や研究室の特色は?

数学は「えんぴつと紙」があればどこでも研究できるので研究室にみんなが揃うことは余りなく、個人が先生とディスカッションする事で研究を進めていくことが多いです。しかし、院生部屋に質問に来てくれたりするので、みんなでわいわい言いながら研究を進めていっています。研究室にも基本的に複雑な機器などはいらないのでみんな思い思いの物を飾っています。(1枚目の写真の後ろに移っているポスターは同室の院生が飾りました。)

今後のご自身の展望とこれからDを目指す人へのメッセージ

今後は一般企業で統計学的な手法を使い、社会貢献していきたいと考えています。元々応用分野に非常に興味があったので今はやる気に満ちています。今、社会にあふれている たくさんのデータは一見ばらばらのように見えますが整理することで法則など何かしら見えてくるということをDで学ぶことが出来ました。基礎的な部分をたどることで応用に繋がっていきました。私自身も「統計が好き」といった根本的な気持ちに戻ったことでDへの進学、統計学を活かした職業に就くことができました。皆さんもこれから進路に悩まれたら是非、自分の心の根源をたどってみてください。

写真 福井さんと研究室の仲間

取材者:岡田 佳那子(理学研究科博士課程後期2年)


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