平成26年度(秋季学位記授与式)

学長式辞(平成26年度広島大学秋季学位記授与式)2014.9.25

本日、晴れて学位記を受けられる卒業生、修了生の皆さん、誠におめでとうございます。平成26年度秋季学位記授与式を挙行するにあたり、広島大学を代表して、心からお祝い申し上げます。皆さんのこのたびの研究業績が人類の未来社会に大きく貢献することを信じています。

20世紀後半からの学術研究の進展は人類社会を大きく変えています。私たちは学術研究の進歩から大きな恩恵を受けるとともに、新しく克服するべき課題も生じています。資源をめぐっての紛争、イデオロギーの対立によるテロ、迷走する民主化運動、領土問題、環境汚染や地球温暖化、感染症、続発する自然災害など、人類が共存するために克服しなければならない課題に直面しています。

我が国に目を転じると、人類がこれまでに経験したことのない超高齢化社会の進展、加速する少子化、日本企業の国際競争力の低下など独自の課題も生じています。一方で学術研究の進歩は目覚ましく、化石燃料や原子力に代わる地球にやさしい新しいエネルギー開発が加速しています。さらには加齢黄斑変性に対するiPS細胞による臨床研究が開始され、再生医学の臨床応用が第一歩を踏み出しました。科学への期待は膨らんでいます。このような社会環境の中で皆さんは広島大学で学ばれ、学生生活を通じて貴重な経験を重ね、広島大学の歴史に大きな足跡を残されました。その業績は永遠に記録されていきます。

人類社会はグローバル化、ボーダレス化が進展することで国際交流が常態化し、社会環境変化も激しく、予測困難な社会になってきています。「ユダヤ人の教養」という本にユダヤの民について書かれています。ユダヤ人、ユダヤ系の研究者には多くのノーベル賞受賞者がいることはよく知られています。バビロン捕囚から20世紀の始めまで祖国のない状況が続き、この間流浪の民として幾多の困難を経験したために教育には非常に熱心であったとされています。常に「よそ者」であり続け、それゆえに生涯学び続けてきたユダヤの民の歴史を振り返り、グローバル化社会への同化や人類の共存など、加速するグローバル化社会の将来と課題について深く考えさせられました。

情報化通信技術の急速な進歩ゆえに、人類社会は益々複雑性、多様性を増し、かつ、激しく急速に変化しています。これから社会に出て行く皆さんは、このような環境変化に常に目を向けるとともに、その変化を受け入れ、国際社会と係わりつつ活動することが求められます。これからの人生において、人類社会への貢献という高い志の下、他者への思いやりを忘れず、失敗を恐れぬ勇気を持ち、自らの判断と責任でそれを克服できる強い人間に育っていくよう願っています。学生時代に形成された人のつながりを大切にし、広島大学で学んだ誇りを忘れず、今後も地域社会、国際社会で人間同士の絆を育みつつ、支え合って充実した人生を展開してください。

新しい門出を心から祝福するとともに、皆さんの前途が希望に満ちた未来につながることを祈念し、お祝いの言葉といたします。

平成26年9月25日
広島大学長 浅原利正


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