IBD診療の実際

Top Page IBDセンターとは スタッフ構成

 

1) IBDの内科治療について

以下に代表的な内科的治療を挙げていきます。

① 5-ASA製剤

 この薬剤のみで寛解維持できる方も多く、IBD治療の基本ともいうべき薬剤です。病変部位に集中的に作用するように工夫された製剤が複数開発されており、病変の罹患部位にあわせて製剤を選択しています。経口剤と経肛門剤があります。

 

② ステロイド剤

 比較的活動性の高い時期に用い、寛解導入を目的として用います。ステロイド剤は副作用が強調されることが多いのですが、短期間に使えば副作用もほとんどなく非常に有効な薬剤です。ただし寛解維持効果は乏しいとされ、副作用を避ける為にも、漫然と長期間に渡り使用することは避けるべき薬剤です。

 

③ 免疫調節薬

 主に潰瘍性大腸炎の寛解導入に用いるタクロリムスと、潰瘍性大腸炎とクローン病の寛解維持に用いるアザチオプリンがあります。 タクロリムスは非常に強力な薬剤で、主に重症化した方に用います。有効血中濃度を測定しながら使用する必要がある為、原則的に入院して治療を開始します。この薬の登場により緊急手術を避けられる方が増えてきました。 アザチオプリンはステロイドやタクロリムスなどの寛解導入治療からの離脱と寛解維持に用います。定期的に血液検査を行う必要があります。

 

④ 血球成分除去療法

 活性化した白血球を血液中から取り除くことで炎症を改善する治療方法で、主に寛解導入に用います。一方の腕の静脈から血液を取り出し、血球成分を除去する特殊なフィルター、あるいはビーズを詰めた円筒形の血球成分除去器に血液を通過させ、活性化された白血球を取り除いた後にもう一方の腕の静脈から戻します。1回の治療で1時間程度かかり、週に1回から数回行う必要がある点が難点ですが、大きな副作用がなく小児や妊娠中の方にも安全に使用できる点が利点です。

 

⑤ 生物学的製剤(抗TNF-α製剤)

 TNF-αと呼ばれる炎症性サイトカインを抑える薬剤で、寛解導入と寛解維持のどちらにも用いられます。現在、点滴で用いるインフリキシマブ(商品名:レミケード)と皮下注射を行うアダリムマブ(商品名:ヒュミラ)が適応薬剤となっています。非常に有効性の高い薬剤で、特にクローン病の治療方法を劇的に変えた薬剤です。

 

⑥ 成分栄養療法

 一般にクローン病患者の治療として行われます。抗原性が低く、脂質の含有量が極めて低い成分栄養剤(商品名:エレンタール)を服用することで、腸管安静を保ちながら栄養補給を行うことができます。強力な治療薬の登場により存在感が薄くなりがちですが、必要カロリーの半分をこの成分栄養剤で補うことで寛解維持効果が認められることが明らかになっています。

 

⑦ 新規治療薬

 IBDの治療は日々進歩しており、新規薬剤の治験、臨床試験が多く行われています。現在では保険で使用されるインフリキシマブやアダリムマブも以前は治験が行われた上で認可されており(当院でも行っておりました)、多くの方のご協力を頂いたおかげで現在治療薬として用いることができております。当センターも全国規模の治験や臨床試験の分担施設となっており、多くの新規薬の治験、臨床試験が進行中です。興味のある方は是非担当医にご相談ください。

 

2) IBDの外科治療について

 IBDに対する外科治療は緊急手術と待機手術に大別されます。緊急手術の適応例としては、大量出血、大腸穿孔、中毒性巨大結腸症などの重症例が挙げられます。一方、待機手術の適応例には、適切な治療にも関わらず治療に難渋する難治例や癌の合併が挙げられます。特に緊急手術例は内科治療から外科治療への切り替えのタイミングが重要であり、内科医と外科医の連携が必須となります。

 

 特にクローン病では腸の狭窄や瘻孔を生じ易いため、外科手術が必要となるケースが多く、また、栄養吸収に重要な小腸に病変を生じることから、できるだけ切除する小腸の範囲を最小限にする工夫が必要となります。その為、比較的小さな範囲の狭窄に対しては小腸を切除しない狭窄形成術なども行っています。

 

 外科的治療の詳細は、「消化器外科」→「診療部門」→「大腸肛門外科」のホームページにも記載されています。下記リンク先をご参照下さい。

  ・クローン病の外科治療

  ・潰瘍性大腸炎の外科治療

 

3) その他

学術講演会、オープンカンファレンスや患者会なども定期的に開催しています。

 


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